【GUIDE】建築音響設計者

ニーズに応じて建物内の音をコントロールする

音のコントロールが求められる建物は意外と多い。コンサートホールやライブハウス、劇場はもちろん、会議場、スポーツ施設、学校、ホテル、住宅でのホームシアターや楽器室、等々。音響設計者の使命は、建築空間の目的に沿った音環境を整えることである。

室内では、部屋の大きさや形によって人への音の伝わり方が変わる。また、仕上げ材や扉・窓などの部位も、遮音や吸音、反射、拡散など音の特性に影響する。そしてさまざまな音響機器の機種や設置場所なども重要だ。音響設計者はこれら音に関わる要素すべてを上手に調整して、必要な音の響きを得るための工夫をする。

イラスト:高橋哲史

劇場やホールでの音響設計を例に挙げてみよう。基本構想では、意匠設計者たちとともに施設の規模や構成、ホールの性格付けなどについて話し合う。ホールの配置計画や形状を決める段階では、意匠設計者のイメージに沿ったアドバイスをする。石や木など内装に使う材料の種類や面積、場所を検討するのも大切な役割。形や仕上げは、建物のデザインに直結する。また、「いい音」を生かすためには雑音を遮断することも必要である。都市部では周囲に地下鉄など騒音や振動を発するものがたくさんあるからだ。工事中には施工図面のチェックや、現場で音響関連工事の監理・指導を行なう。完成後も、施設の運営や改修に伴って音のコンサルティングを続けていく。

なお大規模な施設の計画では大きな模型で音響測定と検証をすることがあるが、通常はコンピュータで空間内の音の分布や波形をシミュレーションして室内の形を検討する。ただし、最終的な評価は訪れる客や演奏者、指揮者といった生の人間がするもの。「何が人を感動させる音環境なのか」という評価軸を持つため、音響設計者は数多くの施設に足を運び、自分の耳で判断することを大切にしている。

求められる資質は、「音」への興味が人一倍強いこと。ホールや劇場の音環境に関わりたいのであれば、普段からコンサートやライブ、演劇の会場に足繁く通う人のほうが向いていることは言うまでもない。また、さまざまな立場の人とやりとりをしながら仕事をするため、コミュニケーション能力が必要とされる。

主な活躍の場は、音響コンサルタント事務所はじめ、ゼネコンや音響メーカーなどの研究部門。環境アセスメントで騒音や振動を測定・評価する事務所もある。音響設計者に必須の資格は特にないが、一級・二級建築士があると意匠設計者や各種関係者とのやりとりがしやすくなるため、取得をめざす人が多い。また、技術士や環境計量士、公害防止管理者が音響設計に関わる資格として挙げられる。

  • 採用までのスケジュール

音響コンサルティング事務所やゼネコンでは、一般的な採用スケジュールによる。学校の研究室からの紹介もある。

建築系学生のためのフリーペーパー「LUCHTA」13号(2010年1月31日発行)より
取材・文:加藤純/イラスト:高橋哲史

 

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