【REPORT-特集-】ルフタリポート001 shibuya1000 #009『シブヤ広場合戦』動画あり

【概要】

shibuya1000_009「シブヤ広場合戦」

主催:shibuya1000実行委員会

開催日時:2017年3月14日(火)

内容:第1部 18:00~20:00(シンポジウム)第2部 20:00~21:00(交流会)

場所:渋谷ヒカリエ 8/COURT

公式サイト:http://www.shibuya1000.jp/index.html

【shibuya1000】とは

今年で9回目を迎えるshibuya1000は、渋谷に愛着を持つ各界の方に、それぞれにとっての渋谷を語っていただき、渋谷という都市を多角的にあぶりだしていくイベント。シンポジウム形式第4弾となる今回のテーマは、「広場」だ。

【挨拶】

開会にあたり副委員長の井口典夫氏から本日の登壇者の紹介があった後、渋谷区長の長谷部健氏から挨拶。自身が育った渋谷のストリートカルチャーをなぞりながら、渋谷の広場は「道路」であると語った。

【プレゼンテーション01 小宮山雄飛】

1人目は、ミュージシャンであり、また渋谷区の観光大使も務めている小宮山雄飛氏。

●広場とイベント

昨年1年間の代々木公園の広場でのイベントスケジュールを振り返ると、ほぼ毎週末に何らかのイベントが広場で行われていることに改めて驚かされる。それも、タイフェス、蕎麦博、ゾンビウォーキング、納豆フェス、、、とジャンルが多種多様である。一見、賑やかに活用されているように思うが、小宮山氏はこの状況にやや危機感を抱いている。

●集まるだけの広場、発信する広場

渋谷の広場には世界中のものが集まるが、それはともすると集まるだけの場所になってしまう恐れがある、と小宮山氏は言う。幕張や代々木公園でも、日々いろいろなイベントが行われているが、それはイベントが面白いだけで、そのまち自体が面白くなるかというと、そうとは限らない。広場として機能しすぎると、そこにたくさんものが集まるけれど、そのまち発信のものがなくなっていく。いろんなものが集まりながらも、同時に渋谷からも発信していけるようになってほしいと言う小宮山氏が提案するのが『SHIBUYA FOOD FES』だ。

渋谷には飲食店の1号店がたくさんある。それを活かして、渋谷のまちのお店を集めたフェスを開催することで、お店同士のつながり、お客さんのつながり、地域のつながりがつくれる。そうした横のつながりをつくり、フェスでたべて、イベントに出て、そしてその本店にいくという動きをつくることができれば、広場を地元に還元できる。それが『SHIBUYA FOOD FES』の狙いだ。

●広場、旅に出る

そして将来的にはこれを地方に持っていったり、海外に持っていく。新潟で渋谷区フェア、パリで渋谷区フェア、ロンドンで渋谷区フェア…。単に集まるだけでなく、外に広がっていくようなものにしていく。これを氏は、「広場、旅に出る」と表現する。いつの日か渋谷の広場が、真に世界に開かれた広場となることを期待したい。

【プレゼンテーション02 齋藤優一郎with田村圭介】

2人目は、映画『バケモノの子』のプロデューサーの齋藤優一郎氏。昭和女子大学准教授の田村圭介氏によるインタビュー形式で進めていく。

【動画はこちら】

2015年に公開された映画『バケモノの子』の舞台は渋谷である。この映画は、現実の渋谷と、バケモノの渋谷という2つの世界から構成されている。その街で、バイタリティーをもった子供が成長していく様を描いた物語だ。では、なぜ渋谷を舞台に選んだのだろうか。

●祝祭性とバイタリティー

カギとなるのは、細田守監督がこの映画を作ろうとした動機だ。細田監督の家に男の子が生まれたとき、細田監督は自分の子供の成長を通して社会を見たときに、変容する社会の中で、これからの時代を生きる世界中の子供たちを励ましたい、祝福したい、という気持ちが沸き上がったという。自分たち大人がそうした子供のために何をするべきなのか、映画を作りながら何かを考えたい。だから、そうした祝祭性やバイタリティーを描く映画をつくりたいという思いに至った。

実際に世界中のいろんな場所を調べていく中で、ファヴェーラ(リオデジャネイロ)のスラム街できらきらと目を輝かせて未来を見ている子供たちがいることを知る。また、その地形がすり鉢状であることから、そうした地形でバイタリティーのある、いろんな人が集う街が日本に無いかと探したときに、渋谷という場所に行き着いた。渋谷という街は、多様な音楽やファッションといったものを受け入れ、新しいものを生み出す人々によってつくられており、そういった場所で一緒にみんなで寄ってたかって子供たちを励まし、祝福してほしい。そんな想いをこめて渋谷を舞台にしたのだ。

●2つの渋谷

また、細田監督の作品の作り方として、ファンタジーだけを描くのではなく、人間の良い部分と闇の部分を浮かび上がらせ、対比して表現していく。ただし、誰もが持っている闇を悪いものとして描くのではない。子供たちが成長途中に抱える「自分は何者なのか」といったアイデンティティを《穴》として表現している。そういった穴は、多様な他者と接することで埋めて成長していけるのではないか。子供たちのそうした穴を、社会が、大人たちが埋めてあげれば、子供たちは成長していけるんだ、というメッセージがこの映画には込められている。渋谷はユニバーサルな場所であり、そこには、さまざまなモチーフやテーマ、あらゆる人の生き方があるんだと思う。

【プレゼンテーション03 平井真央】

3人目は、『風とロック』代表、元博報堂勤務で、現在コミュニティFM「渋谷のラジオ」の総合プロデューサーを務めている平井真央氏。

●インフラとしてのメディア

「渋谷のラジオ」は2016年4月1日に本放送開始となったコミュニティラジオだ。地域密着×世界最先端の放送局というコンセプトで、ステーションメッセージは「ダイバーシティ・シブヤシティ」である。誕生のきっかけのひとつは3.11だった。震災後に各地の災害FM が、大きな放送局が扱わないような生活情報を発信し、全国各地に散らばったコミュニティをつなげていた。そうした状況を見て、近い将来災害が起きた時のコミュニティをいま作っておく必要があると感じた。また、そうした備災のためのコミュニティをメディアで創るというモデルを全国に普及させることも目的のひとつであった。

●地域のラジオ

「渋谷のラジオ」は、聞くだけでなく出るラジオだ。様々な人に出てもらうことで、つながりが生まれる。3か月あたり約1200人が出演しており、何年か後には、渋谷区に住んでいる人はみんな出ているくらいにしたいと画策している。「ローカルヒーローのような、人が名産となるような状況をこれからもつくっていきたい」と平井氏は意気揚々と話す。

●田舎的な渋谷

「渋谷のラジオ」の運営はボランティアスタッフに支えられている。現在760人のボランティアが登録されており、老若男女が集う「町内会」のようになっている。渋谷には一見すると都心の冷たさがあるが、一枚皮をはぐと、とてもあたたかい田舎のような世界があるという。「世界のスクランブル交差点」が皮としてまとっている一方で、中の血管はそうした町内会のようなものになっているという、渋谷の意外な一面を知ることができた。

【プレゼンテーション04-1 林千晶】

最後は、ロフトワーク代表取締役で、FabCafeの運営も行っている林千晶氏。クリエイティブエージェンシーとして渋谷の広場を語る。

●拾う神様と出会う場所

自分が考えていることを、「それいいね」と言ってくれる人が1人でもいれば、それを頑張ろうと思える。自身が見た例として、水耕栽培で野菜をつくるという一見非効率的な方法を、とあるレストランのシェフが面白がってくれたことを挙げる。根っこも食べられるし、着色した水で育てるとカラフルになる、といったカスタマイズした野菜が作れると面白がって“拾って”くれたという。

●不自由な日本の広場

中国に行ったときにびっくりしたことについて、1本の動画を見せてくれた。公園で踊っている男の人のまわりにおばちゃんが集まって踊っている。

「これを見たときに日本の広場ってずいぶん不自由な広場だなーって思いました。あれやっちゃいけないこれやっちゃいけないって。」

この動画のような、何でもやっていいような渋谷にしたいと林氏は言う。特に、老人にとって自分のヒーローや仲間を見つけられるような場所に。なぜなら、拾う神様と出会うと、助け合う仲間が増えるから。大事なことは、助ける産業をつくるのではなく、歳を取っても助け合える環境をつくることなのだと。

【プレゼンテーション04-2 林千晶+内藤廣+川添善行】

林千晶氏。川添善行氏と内藤廣氏も交えて渋谷の広場を語る。

●広場がつまらない

そもそも今回のテーマを「広場」にした理由は、都市計画がやっている広場がつまらないから、と川添氏。ほんとうの意味でのふれあい広場にするためには、どういうルールを変えなければいけないのだろうか。

●不真面目にやる

「行政がどこまで見て見ぬふりができるか」というのが、自然発生的な広場をつくるために必要なことだ、と内藤氏。しかし文句を言う人が出ると行政はそれに対応しなくてはならない。実際には、文句を言う1000倍くらい楽しんでいる人がいるのに、だ。楽しんでいる人が「今日もありがとう」と伝えなければ、不満の声ばかりが行政に届き、結果的にルールで縛られた広場になってしまう。それを突破する一つのアイデアとして、たとえばfacebookの「いいね!」のような仕掛でもって、「管理しないでくれてありがとう」という市へのメッセージを伝えられたら、何か変わるかもしれない。そういうときにもコミュニティが一役買って、「私たちがやるので、区の人はやらなくていです」と言えるのが大事であろう。

ところで、コミュニティが強いと同質性が高まるが、多様性を受け入れるコミュニティをつくるためにはどうすればいいのか。広場は、本当の意味で一人になれる場所であり、仲良くするために来る場所であっては居心地がよくないと感じる人もいる。その意味で、コミュニティというのは、一続きのものでなくて、江戸時代の「講」のようなもので、サークルみたいなものであるべきだ、と内藤氏は言う。みんなハチ公前広場に頼りすぎている現状を打破し、もっと大小さまざまな広場が飛び火して渋谷のあちこちにあるといいかもしれない。

【結びに】

結びの挨拶での内藤廣氏と岸井隆幸氏の言葉を借りれば、「混乱を楽しみながら、切磋琢磨しよう」。渋谷の街づくりはあと10年は混乱状態であるが、この混乱状態も楽しむ気持ちで過ごしたい。そして、今後新宿、池袋、品川、上野も追いかけるように再開発が行われる。お互いに競い合うエリアがあるところが東京の良さであり、そこからまた新しいものが生まれてくるだろう。渋谷に集まる人々によって、どのような新しい芽がうまれ、また拾い上げられていくのだろうか、今後も渋谷から目が離せない。

 

【shibuya1000公式サイト】

shibuya1000公式サイトはこちらから

ライター紹介

朱涵越(しゅ・かんこう)。1992年上海生まれ。東京理科大学建築学科卒。現在、東大院で環境学をベースに都市デザインを学んでいます。トウキョウ建築コレクション2017の論文展代表を務めたご縁でライターとして活動開始。花森安治の「文章は言葉の建築。」を胸に、読み手の日常にちょこっと色を足すような記事を書いていきます。