きめ細かい対話のなかに理想のキッチンを見出す【キッチンデザイナー】

きめ細かい対話のなかに理想のキッチンを見出す

キッチンの使い方は一人一人異なり、好みのスタイルやデザインも人それぞれ。さまざまな要望を取り入れて、住み手にとって理想のキッチンをつくり上げるのがキッチンデザイナーである。

日本には「システムキッチン」と呼ばれるパッケージ商品を扱うメーカーが多い。これは、あらかじめ設定されたスタイルから好みのものを選び、扉材や機器類をカスタムしていくもの。キッチン専門の設計会社などではオーダーメイドの洋服のように、スタイルからレイアウト、細かい機器類まで、個別にしつらえる。住宅の設計者がキッチンの細部まで設計することはあるが、専門性の高いキッチンデザイナーとの協働が必要となるケースも増えている。なお会社の規模の大小を問わず、一般的に自社のショールームがあり、打合せもここですることが多い。


イラスト:高橋哲史

キッチンデザイナーの仕事は、住み手に大まかな要望や予算を聞くことから始まる。それらに応じて図面や写真、パースなどで案を出し、住み手に確認してもらうという打合せを4〜5回ほど繰り返す。そのつど出てくる要望を取り入れながら、予算のなかでだんだんと細かい仕様を決めていくのが一般的な手順。カウンタートップや扉、取っ手などのパーツ類、コンロやオーブンなどの調理機器、食洗機やレンジフードなどの設備機器、蛇口や浄水器等々の種類や色は、住み手とともに各機器のショールームで実物を確認しながら決めることも多い。見た目はもちろんだが、長い期間を見据え、間取りとの兼ね合いを考えて使い勝手をよくする提案は、プロとして積み上げた知識と経験にかかっている。

キッチンでは、水道や電気、ガスなどを使うため、キッチン設備と建物との取り合いや建築関連法規の知識も求められる。詳細な図面を作成した後も、配管や配線の位置などを各種業者と打ち合わせ、工事業者とやりとりして材料や製品を注文する。工事が始まれば、現場で取付け方法の指示をし、できた後には不具合がないかをチェックする。その後も使い心地を聞くなど、アフターメンテナンスを怠らない。

キッチンは、住み手のライフスタイルや食生活と密接な関わりがある。最近では、ダイニングやリビングと一体になって開放的な「オープンキッチン」が急速に普及している。これは少子化とともに共働きの家庭が増え、キッチンで過ごす時間は家族で過ごす大切なひとときとなっていることが1つの要因。来客のもてなしもキッチンで行なわれることが多くなっている。キッチンデザイナーはこうした動きにも敏感に対応し、現代の生活にふさわしいキッチンのあり方を日々考えている。

主な就職先は、キッチン空間に関わるメーカーや販売・設計・施工業などの企業。キッチン専門の会社もあり、なかにはアトリエ的な事務所を設立して個人で活動する人もいる。専門家の需要が多いため、「キッチンスペシャリスト」という資格もある。キッチンデザイナーは、住み手と対話をしながら一緒につくり上げていくプロセスが大切だ。住み手との対話のなかで要望を的確に拾い上げ、提案をかみ砕いて説明することが求められる。住み手の満足のいくようにできあがった時、それはキッチンデザイナーにとっても至福の時である。

  • 採用までのスケジュール

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p style=”padding-left: 30px;”>メーカーなどの企業では、一般的な採用スケジュールによって行なわれる。小規模の事務所では採用のタイミングはまちまちで、即戦力として経験者が求められることも多い。

建築系学生のためのフリーペーパー「LUCHTA」9号より
取材・文:加藤純/イラスト:高橋哲史

 

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