- 地域の多様な人と関わりながら 社会課題を建築で解決する
- あなたの「つくりたい」が、 地域を動かす力になる
- ■ 研究室情報
- ■ 髙橋ゼミが大切にする5つの価値観
- ■ プロジェクト紹介
- ▣ 森を育てる「ちいさな建築」プロジェクト|栃木県さくら市
- ここが特別!学びのポイント
- ▣ 空き家を再生する「100年をつむぐ」プロジェクト|鳥取県南部町
- ▣ まちのつながりを生む「調布市空き家エリアリノベーション事業」|東京都調布市
- ■ 髙橋ゼミで得られる7つの力
- ■ 3つのプロジェクトを比較
- ■ 髙橋ゼミの、ふだんの風景|週間スケジュール
- ■ 高橋先生をもっと知るための10のこと
- ■ 研究者紹介
- ■ 略歴・著書
- ■ 建築を学びたいあなたへ
- ■ 髙橋ゼミで、未来のまちづくりを学ぼう
地域の多様な人と関わりながら
社会課題を建築で解決する
私のゼミでは「地域の拠点づくり」に取り組んでいます。学生たちは、子どもから高齢者まで年齢も立場も異なる人たちと話し合いながら、その地域の空きストックの活用法を考え、改修だけでなく、その後の使い方も含めた管理・運営までの企画提案を行います。東京都大田区からはじまり、東京都調布市や鳥取県西伯郡南部町(さいはくぐんなんぶちょう)など日本の様々な地域が活動エリアになっています。建築が多くの人との協働によって成り立っているのと同じく、地域の問題も、そこに住む人々や企業、行政との関わりなくしては解決できません。そうした交流や協働を通して、コミュニケーション力が鍛えられるとともに、リアルな社会課題を建築で解決するための手法を身につけることができます。
あなたの「つくりたい」が、
地域を動かす力になる

「建築を学びたい」「地域のために何かしたい」「自分の手でカタチにしたい」——そんな想いを持つあなたへ。
髙橋ゼミナールは、教室での学びを超えて、リアルな地域課題に挑む研究室です。栃木の森から鳥取の空き家、そして身近な調布のまちまで。学生が主役となって、企業や行政、地域の人々と協働しながら、「次の100年」につながる建築と環境を創造しています。
私たちのゼミが大切にしているのは、ただ建物を設計することではありません。その土地に眠る魅力——それは歴史かもしれないし、自然かもしれないし、そこに暮らす人々の営みかもしれません——それらを丁寧に見つけ出し、それを活かしながら、未来の世代へと受け継がれるような価値ある場所を創造していくこと。これが、私たちの約束です。
多くの地域が直面する「空き家の増加」「住民の高齢化」「若者の流出」といった課題。これらは一見、解決が困難に思えるかもしれません。しかし、髙橋ゼミでは、これらの「問題」を「地域の資源」として捉え直すところから始めます。使われなくなった空き家は、新しいコミュニティの拠点になる可能性を秘めています。うっそうとした森は、人々が集う「おおきなリビング」になるかもしれません。

ここでは、あなたのアイデアが本当にカタチになります。設計図を描くだけでなく、企画から施工まで、プロジェクトの全てに関わることができる。地域の人々と対話し、プロフェッショナルから学び、自分の手で空間をつくり上げていく。そんな実践的な学びの場が、ここにあります。
建築は、単なる「モノ」をつくる行為ではありません。人々の暮らしを豊かにし、コミュニティを育み、地域の未来を描くこと。そして何より、次の世代へとつながる価値を生み出すこと。髙橋ゼミでの経験は、あなたに建築家としての技術だけでなく、社会をより良くデザインしていくための視点と実践力を与えてくれるはずです。



■ 研究室情報
| 学校名 | 共立女子大学 |
|---|---|
| 学科名 | 建築・デザイン学部 建築・デザイン学科 |
| 分野 | 都市計画,建築計画 |
| 分類 | 地域資源活用、空き家活用、医療・教育施設計画 |
| 研究室名 | 髙橋ゼミナール |
| 担当教員 | 髙橋大輔[教授] |
| キャンパス | 神田一ツ橋キャンパス |
| 所在地 | 〒101-8437 東京都千代田区一ツ橋2-2-1 |
| 公式サイト・SNS | https://ap-lab.net/ https://mt2a.jp |
| 主な研究テーマ | 1.空きストックの利活用と地域コミュニティの醸成に関する実践的研究2.BCP(Business Continuity Plan)に対応した動物病院の建築設計計画に関する研究3.地方都市における文化的コモンズの構築手法に関する研究 |
| キーワード |
■ 髙橋ゼミが大切にする5つの価値観
🌱 発想の転換
私たちは「地域の課題」を「資源」として捉え直すことから始めます。空き家は取り壊すべき厄介者ではなく、新しいコミュニティの核となる可能性を持っています。竹害と呼ばれる竹林の問題も、アートや建築の素材として活用すれば、地域の魅力になります。
この「視点を変える」という行為は、建築を学ぶ上で最も重要なスキルの一つです。同じ風景を見ていても、そこに何を見出すかは、あなたの視点次第。課題を課題として嘆くのではなく、可能性として捉える。その思考のプロセスについて、実践を通じて身につけていきます。
🤝 協働の力
一人でできることには限界があります。だからこそ、私たちは多様な人々と手を取り合います。大手建設会社のプロフェッショナル、他大学の研究者、地元の職人、行政の担当者、そして地域に暮らす人々。それぞれが持つ専門性や視点を掛け合わせることで、一人では決して到達できない高みに辿り着くことができます。
「産学官連携」という言葉は難しそうに聞こえるかもしれませんが、要するに「みんなで力を合わせる」ということ。異なる背景を持つ人々とコミュニケーションを取り、共通の目標に向かって進んでいく。その経験は、社会に出てからも必ず活きる、かけがえのないスキルとなるでしょう。
✋ 手を動かす学び
髙橋ゼミでは、図面を描くだけでは終わりません。実際に現地に足を運び、自分の手で木材を組み、壁を塗り、空間をつくり上げていきます。DIYでの施工に参加することで、材料の特性を肌で感じ、職人の技術に触れ、「つくる」ことの本質を理解していきます。
頭で考えたことと、実際に手を動かして実現することの間には、大きなギャップがあります。そのギャップを埋めていくプロセスこそが、真の学びです。汗を流し、時には失敗し、それでも諦めずにカタチにしていく。その経験は、何よりも強い自信となって、あなたの中に残るでしょう。
🌍 伝統と革新の融合
私たちは、日本の伝統的な技術を大切にしながら、最新のテクノロジーも積極的に取り入れます。釘を一本も使わない木組みの技術を学びながら、LINEを活用した空き家問題の解決策を考える。一見、相反するように見えるこの二つのアプローチは、実は深いところで繋がっています。
持続可能な社会を実現するためには、古いものを単に捨て去るのではなく、その知恵を現代に活かしながら、新しい技術と掛け合わせていく柔軟性が必要です。温故知新——古きを温ねて新しきを知る。この姿勢こそが、これからの建築に求められているのです。
⏳ 長期的視点
「10年を耕し、100年をつむぐ」——これは、南部町プロジェクトのコンセプトであると同時に、髙橋ゼミ全体の姿勢を表す言葉でもあります。地域再生は、単発のイベントや短期的な施策では実現できません。じっくりと時間をかけて地域という土壌を耕し、次の世代、その次の世代へとつながる価値を紡いでいく覚悟が必要です。
すぐに結果が出ないこともあるでしょう。思い通りにいかないこともあるはずです。それでも、未来を信じて活動を続けていく。その忍耐強さと情熱こそが、本当に価値あるものを生み出す原動力となります。私たちは、目先の成果に囚われることなく、長期的な視点で地域と向き合い続けています。
■ プロジェクト紹介
3つのフィールドで学ぶ、建築の可能性
髙橋ゼミでは、3つの異なるフィールドで実践的なプロジェクトを展開しています。それぞれのプロジェクトは、場所も規模も課題も異なりますが、「地域資源を活かして、人と場所をつなぎ、新たな価値を創造する」という共通の理念のもとに進められています。
▣ 森を育てる「ちいさな建築」プロジェクト|栃木県さくら市

熊谷組・東京電機大学・北海学園大学
栃木県や企業との産学官連携プロジェクト
森全体が、ひとつの大きなリビングになる
もし、この広大な森そのものが、ひとつのリビングルームだとしたら・・・。
木漏れ日の下には心地よいソファや本棚があり、ダイニングテーブルを囲むように、小さな建築たちが点在している。そこは、子どもたちが木陰で遊び、大人たちが語らい、誰もが思い思いの時間を過ごせる場所。それが、私たちが描く未来の風景です。
舞台となるのは、栃木県さくら市「喜連川ファミリー・キャンプ場」にある傾斜地。
私たちは5年の歳月をかけて、この場所を「人と自然が共生する場所」へと育てていきます。森を切り開くのではなく、起伏ある地形や木々の息吹に寄り添うように「ちいさな建築」をそっと置き、森というリビングで、新しい豊かさが始まります。
プロジェクトの核心:「家具をつくるように、建築をつくる」
このプロジェクトの最も革新的な点は、建築と自然の関係を根本から問い直していることです。私たちは、森全体を一つの「おおきなリビング」と捉え、そこに置く「家具」や「インテリア」として建築物を設計します。
通常、建築は「土地に建てる」ものと考えられます。しかし、このプロジェクトでは、建築を「森の中に置く」ものとして捉えます。リビングルームに新しい家具を置くとき、私たちは部屋全体のバランスや動線、光の入り方などを考えますよね。同じように、森という大きな空間に、どこに、どんな建築を配置すれば、最も心地よく、機能的で、美しい環境が生まれるのか。そこから発想していくのです。
参加した学生さんのコメント
「初めて木組みに挑戦したとき、こんなに難しいとは思いませんでした。ダボの位置が少しでもずれると、きれいに組めない。何度も失敗して、やっと一つの接合部が完成したときの達成感は忘れられません。自分の手で組んだ木組みが、実際に森の中で人々の居場所になる。その実感が、何より嬉しいです」(3年生・Aさん)

ここが特別!学びのポイント
🔨 釘を使わない
伝統技術に挑戦
このプロジェクトで設計・施工される建築物には、「コースレッドや釘を一本も使っていない」という驚くべき特徴があります。代わりに、日本の伝統的な木工技術である「ダボ」による木組みの技法が採用されています。
学生たちは、実際に木材を加工し、ダボを打ち込み、構造を組み上げていく過程で、木という素材の特性を肌で学びます。職人の技術への敬意と、持続可能な建築への理解が、同時に育まれていくのです。
🤝 プロフェッショナルとの
本格的な協働
東京電機大学、北海学園大学はもちろんのこと、熊谷組、杉インテリア木工館の薄井氏をはじめ、多くの専門家が一堂に会し、学生たちと共にプロジェクトを進めます。
実際のプロジェクトメンバーとして、プロフェッショナルたちと対等に議論し、アイデアを出し合いながら、一つの作品を作り上げていきます。

▣ 空き家を再生する「100年をつむぐ」プロジェクト|鳥取県南部町

使われなくなった家が、まちの宝物に変わる
鳥取県の西端、中国山地の麓に位置する南部町。人口約1万人のこの町は、豊かな自然と歴史に恵まれた美しい場所ですが、多くの地方都市と同じ課題に直面しています。若者世代の定住が進まず、高校卒業を機に多くの若者が町外へ流出してしまう。その結果、高齢化が進み、空き家が増え続けているのです。
2020年、地域で活動する「一般社団法人 つながる地域づくり研究所」の一井暁子氏や「なんぶ里山デザイン機構」の加藤潤氏より依頼を受け、プロジェクトが始まりました。2020年度〜2024年度まではコロナ禍をはさみながらも、南部町のさまざまな地域資源についてオンラインでヒアリングなどを行い、コロナが落ち着いてからは地元の青年団と一緒に、町内の空き家の改修と運営方法の提案を毎年夏に現地でワークショップを行いました。4年後にようやくそれらの提案を実現できることになり、オーナーさんや地域住民や行政の方々へのプレゼンテーションを経て、「えん処 明神谷(みやじだに)」として再生され、今でもなかなか予約が取りづらいほど賑わっています。
2025年度からは共立女子大学の萩生田ゼミとの共同プロジェクトとして、町内に増え続ける竹をフォーリーのような建築をつくるために活用出来ないか、様々な提案を行い、2026年11月に開催される「鳥取かぐや祭inとっとり花回廊」にて作品をお披露目する計画で進めています。
学生が主役:プロジェクトの全プロセスに関わる

このプロジェクトの最大の特徴は、学生が単なる設計者ではなく、地元の青年団と一緒に、プロジェクト全体の主役として深く関わっている点です。学生たちは、さながら「マイクロ設計事務所」や「地域コンサルタント」として機能します。
課題発見と分析
地域を訪れ、長い歴史を持つ地域文化をリサーチすることはもちろん、住民の方々と対話し、地域の本質的な課題を見つけ出していきます。
企画・コンセプト立案
地域の課題分析から導き出されたニーズをもとに、プロジェクトの根幹となるコンセプトを立案します。
改修設計
コンセプトに基づき、具体的な空間デザインを行い、実施可能な詳細設計図を作成します。
概算見積もり
材料費、人件費、諸経費を積算し、概算見積もりを作成します。
地域との合意形成
地元の青年団や建設会社、行政の方々と協議を重ね、全員が納得できる形にブラッシュアップします。
使う人たちがDIYで施工に参加
地元の青年団や職人さんと協力しながら、自分たちの手で居場所となる空間をつくり上げます。

生まれ変わった空間:旧岡田邸のストーリー

南部町の中心部から東に約5キロの位置にある「旧岡田邸」。赤瓦の屋根が美しい集落景観を形成し、近くには「ほたるの里」があるとても自然豊かな環境です。かつては家族の笑い声が響いていたこの家も、住む人がいなくなって久しく、雨漏りや老朽化が進んでいました。学生たちは、この家を新しい命を吹き込む対象として選びました。
1階

地域に開かれた交流スペース。誰でも気軽に立ち寄れる、オープンな雰囲気の空間として設計しました。
2階

若者を呼び込むウィークリーハウス。個室と共有スペースを組み合わせた設計で、プライバシーを保ちながらも、住人同士の交流が自然に生まれる仕組みになっています。
創造的なアイデア:まちの魅力を高める住まい手

当初は地域に開かれたパブリックな空間と共に、まちの魅力を紡いでくれる住人を想定してシェアハウスを計画していました。単なる「住む場所」として設計するだけでは、地域再生にはつながりません。そこで学生たちは、「どんな人に住んでもらえば、まち全体が活性化するか」という視点から、戦略的に考えました。
🥖 パン職人 / 洋菓子職人
南部町の豊かな農産物を活かした美味しいパンやスイーツを作り、地域の食材の魅力を伝えます。地元の農家さんにとっても新しい販路ができ、町外からもお客さんが訪れるようになります。
✍️ ライター / 編集者
町の隠れた魅力を発掘し、魅力的な文章で発信します。地元の伝統行事、職人の技、美しい風景、美味しい食べ物——そうした「良いところ」を丁寧に記録し、SNSやウェブメディアで発信していきます。
📷 写真家 / 映像作家
プロの写真家や映像作家に南部町の四季折々の風景や人々の営みを撮影してもらえば、それは町の貴重なアーカイブになります。美しい写真や映像は、SNSを通じて瞬く間に拡散し、多くの人々の心を動かします。
建物の改修だけでなく、「地域の魅力を掘り起こす」「人と人との関係を広げる」「新しいコミュニティを育む」こと、その場所の運営を地域の人たちが自分たちできるようにすることが、このプロジェクトの真の目的です。
段階的な関係人口創出――古民家を「接点装置」として再構築する試み
この学生たちの企画や改修設計案をもとに、岡田邸は「えん処明神谷(みょうじんだに)」として再生され、運営はNPO法人なんぶ里山デザイン機構が担い、地域内の古民家を借り上げて改修し、管理運営を受託する形で成立しています。同機構は姉妹施設として「えん処 米や」(お試し住宅)も運営しており、明神谷はこれと役割を分担する位置づけにあります。
明神谷の特徴は、単一機能の宿泊施設ではなく、「滞在体験」と「地域交流」という二つの機能を一つの建物に併存させている点にあります。

第一に、週単位で利用できるウィークリーハウスとしての機能です。

最大5名まで宿泊可能で、母屋(桜1〜3号室)と離れ(蛍1〜2号室)に分棟されており、全棟貸しだけでなく部分貸しにも対応しています。
第二に、町内外の誰でも利用できる交流スペースとしての機能です。

平面図上でも入居者占用部分と交流スペース占有部分が区分されており、宿泊者の私的空間と地域に開かれた公共的空間が意図的に分離・併設されています。この交流スペースは「なんぶ里山デザイン大学」の講座やイベント会場としても積極的に活用されており、移住検討者に限らず地域住民との接点を生む装置になっています。
米や(お試し住宅=移住検討者向け)と明神谷(ウィークリーハウス=誰でも利用可)は、移住検討プロセスの異なるフェーズをカバーする構成になっています。すなわち、移住をいきなり前提とせず、まず「1週間住んでみる」という低いハードルの関与を提供し、そこから地域との接点を段階的に深めていくという設計思想が読み取れます。空き家を単に「貸す・売る」対象として扱うのではなく、滞在体験を通じた関係人口の創出装置として再構築している点に、この事例の再生モデルとしての意義があります。
参加した学生さんのコメント
「夏休みに、南部町に滞在して地元の青年団と改修提案ワークショップを行いました。毎日、朝から夕方までディスカッションとプレゼンテーションを繰り返し、本当に大変でしたが、地元の青年団の方々がいつも気にかけてくださって、沢登りやカヤックに連れて行ってもらえたり、一緒にご飯を食べたり、バーベキューを開催してくださったり。東京では経験できない、人と人との温かいつながりを感じました。この経験は、私の人生の宝物です」(4年生・Dさん)

▣ まちのつながりを生む「調布市空き家エリアリノベーション事業」|東京都調布市

身近なまちから、変化を起こす
東京都の西部に位置し、新宿まで電車で20分という利便性の高い場所でありながら、緑豊かで落ち着いた住環境が魅力のまちです。この調布で、2020年度から2023年度まで東京都に採択され、継続的に取り組んだ「調布市空き家エリアリノベーション事業」です。
空き家エリアリノベーションとは?
「空き家エリアリノベーション」は、一つの建物だけでなく、エリア全体を対象とする、より大きなスケールの取り組みです。対象エリアのキーとなる施設と遊休不動産を戦略的に活用し、それらを有機的につなげることで、エリア全体の魅力を高め、新たな人の流れとコミュニティを生み出します。
多様なパートナーとの協働
手紙社
クリエイティブカンパニーである手紙社は、「暮らしを楽しむ」をテーマに、蚤の市や出版など、様々な事業を展開しています。改修した空間を文化発信の拠点として活用しています。
調布市・三鷹市・狛江市・府中市
行政との連携により、空き家のデータや都市計画の情報を提供してもらい、プロジェクトを進める上での制度的なサポートを受けています。学生たちは「公共の視点」を学び、様々なステークホルダーの意見を調整する経験ができます。
TechPlant株式会社
IT企業であるTechPlantは、テクノロジーを活用したまちづくりのパートナーです。空き家のデータベース構築、マッチングシステムの開発、SNSを活用した情報発信など、デジタル技術を駆使したアプローチを提供してくれます。
実現事例:富士見BASEの再生ストーリー

西調布駅から徒歩約15分の調布市富士見町。石原小学校から徒歩3分の住宅街に、長年使われていなかった一軒の家がありました。この空き家を調布市の空き家エリアリノベーション事業のもとで再生し、2022年6月1日、まちなかラボ「富士見BASE」としてオープンしました。
1階の再生:地域に開かれた多目的空間
1階は、3組の運営者が使う3つの場に分かれていました。持ち込まれたプラスチックをその場で新しいかたちに変える再生プラスチックステーション「pebbles」、子どもが大量の素材で自由に遊べるアートの遊び場「みんぐるらんど」、そして本棚に囲まれた居間のようなまちライブラリーの無料カフェ「Our living room Café」です。。
2階の再生:新しい事業者の拠点
2階は、ギャラリーとシェアスペース、バルコニーで構成され、日常的な活動が営まれる1階に対し、展示や共同利用に開かれた自由度の高い空間として位置づけられました。富士見BASEはその後クローズし、ここで育まれた活動とつながりは、新たな拠点「トビバコ」へと引き継がれています。
完成したA邸は、すぐに地域の人々に受け入れられました。オープニングイベントには100人以上の方々が訪れ、「こんな場所が欲しかった」という声がたくさん聞かれました。今では、毎週末に何らかのイベントが開催され、常に人の出入りがある、活気ある場所になっています。
参加した学生さんのコメント
「大学からのアクセスがよい調布市でプロジェクトに関われることができるのは、すごく恵まれていると思います。授業がない時には現場に行けるし、日常的に地域の変化を感じられる。A邸で開催されるイベントにも気軽に参加できて、自分たちが関わった空間が実際にどう使われているのか、リアルタイムで見ることができます」(3年生・Eさん)

■ 髙橋ゼミで得られる7つの力
3つのプロジェクトを通じて、学生たちは単なる建築の技術だけでなく、これからの社会をより良くデザインしていくための総合的な力を身につけていきます。ここでは、髙橋ゼミでの学びを通じて得られる7つの力を紹介します。
[01]課題を資源に変える発想力
多くの人が「問題」として捉えるものを、「可能性」として見る。この視点の転換こそが、イノベーションの起点です。空き家、竹害など、一見ネガティブに見えるこれらの課題も、見方を変えれば地域の貴重な資源になります。
髙橋ゼミでは、常に「この課題は、どんな価値に転換できるか?」と問い続けます。その思考プロセスを繰り返すことで、固定観念にとらわれない柔軟な発想力が育まれます。
[02]プロジェクト全体を動かす実践力
アイデアを思いつくことと、それを実現することの間には、大きな溝があります。髙橋ゼミでは、その溝を埋める「実践力」を徹底的に鍛えます。
企画立案から、資金調達、スケジュール管理、関係者との調整、設計、施工監理、完成後の運営まで。プロジェクトの全プロセスに主体的に関わることで、「実現する力」が身につきます。
[03]多様な専門家と協働する連携力
複雑化する現代社会では、一人で完結する仕事はほとんどありません。異なる専門性を持つ人々と協働し、それぞれの強みを引き出しながら、共通の目標に向かって進む。そんな「チームで価値を創る力」が不可欠です。
髙橋ゼミのプロジェクトでは、建設会社、他大学、行政、地域住民、職人、IT企業など、実に多様な人々と協働します。その経験を通じて、真の「連携力」が育まれます。
[04]伝統とテクノロジーを融合する応用力
持続可能な未来を実現するためには、古いものと新しいものを対立させるのではなく、融合させる視点が必要です。日本の伝統的な木組み技術には、現代建築が学ぶべき知恵がたくさんあります。
髙橋ゼミでは、伝統技術とテクノロジーの両方を学び、それらを創造的に掛け合わせる力を養います。この「両利きの思考」こそが、これからの時代に求められる応用力です。
[05]長期的視点で考える持続力
「10年を耕し、100年をつむぐ」——真に価値あるものを創るには、長期的な視点と忍耐強さが必要です。すぐに結果が出なくても、諦めずに続ける。目先の成果に囚われず、未来を見据えて行動する。
長期的視点を持つことは、「責任感」を育てます。自分たちがつくったものが、10年後、100年後にどう評価されるか。そんな問いと向き合うことで、真摯なプロフェッショナル意識が芽生えます。
[06]地域の文脈を読み解く分析力
どんな建築も、文脈から切り離されては存在し得ません。その土地の歴史、文化、自然環境、社会経済状況——様々な文脈を丁寧に読み解き、それに応答する建築をつくる。その分析力と洞察力を、実践を通じて磨きます。
この「場所を読む力」は、建築家にとって最も重要なスキルの一つです。地域の文脈に応答しながら、新しい価値を付加する。そのバランス感覚を、髙橋ゼミでは養います。
[07]ローカルとグローバルをつなぐ視野
地域に根ざしながら、世界を見据える。ローカルとグローバルの両方の視点を持つことが、これからの時代には不可欠です。髙橋ゼミでは、地域密着型のプロジェクトを進めながら、同時に国際的な文脈でも活動を位置づけます。
日本の地域課題は、実は世界中の先進国が直面している課題でもあります。日本での実践が、世界のモデルケースになり得る。そんな大きな視座を持つことで、自分たちの活動の意義をより深く理解できます。
■ 3つのプロジェクトを比較
それぞれ異なる特徴を持つ3つのプロジェクト。場所も規模も課題も異なりますが、すべてに共通するのは「地域資源を活かして、人と場所をつなぎ、新たな価値を創造する」という理念です。
|
栃木プロジェクト 「家具をつくるようにちいさな建築をつくり、次世代のもりをつくる」 |
鳥取プロジェクト 「10年を耕す100年をつむぐプロジェクト」 |
調布プロジェクト 「調布市空き家エリアリノベーション事業-まちのつながりプロジェクト」 |
|
|---|---|---|---|
| 目的 | 森の中に皆が集える「おおきなリビング」を創出し、自然と建築の新しい関係性を提示する | 空き家を「地域の居場所」として再生し、若者の定住とコミュニティ形成を促進する | 都市の遊休不動産を戦略的に活用し、エリア全体の価値の向上とつながりを創出する |
| 場所 | 栃木県さくら市 喜連川ファミリー・キャンプ場 | 鳥取県西伯郡南部町 | 東京都調布市 |
| 主な協力相手 | 熊谷組、東京電機大学笹谷研究室、北海学園大学三澤研究室、栃木県林業大学校、杉インテリア木工館、テクノウッドワークス、エヌシーエヌ、シェルター、栃木県、さくら市、地元商店会 | 南部町、なんぶ里山デザイン機構、地元青年団、共立女子大学萩生田ゼミ、つながる地域研究所 | 菅原大輔、SUGAWARADAISUKE 建築事務所、FUJIMI LOUNGE、覚證寺、手紙社、調布市・三鷹市・狛江市・府中市、トビバコ |
| ここで学べること | 産学官連携による大規模な環境デザイン、日本の伝統的木組み技術、国際的な視野での発信力、5年という長期プロジェクトのマネジメント | 地域の思い出と地域資源のアーカイブ化、課題発見から企画・設計・施工までの一貫したプロセス、DIYでの改修技術、地域コミュニティとの深い関わり、地元住民が主体となって動けるよう全体の仕組みをチューニングすることで課題解決 | 都市部特有の複雑なステークホルダーマネジメント、エリア全体を俯瞰する視点、地域文化を読み取る力、クリエイティブディレクションの手法、持続可能な空き家活用モデルとしてのオルタナティブスペースの構築 |
「家具をつくるようにちいさな建築をつくり、次世代のもりをつくる」
「10年を耕す100年をつむぐプロジェクト」
「調布市空き家エリアリノベーション事業-まちのつながりプロジェクト」
プロジェクトの選択について
髙橋ゼミに入ったら、必ずしも一つのプロジェクトだけに取り組むわけではありません。学年や興味に応じて、複数のプロジェクトに関わることも可能です。例えば、3年生のときは調布プロジェクトで基礎を学び、4年生になったら鳥取や栃木のプロジェクトに挑戦する——そんなステップアップも可能です。
また、各プロジェクトは独立しているようでいて、実は深いところでつながっています。栃木で学んだ木組みの技術を鳥取で応用したり、調布で得たエリアマネジメントの視点を栃木のプロジェクト計画に活かしたり。プロジェクト間の相互作用によって、より豊かな学びが生まれます。
■ 髙橋ゼミの、ふだんの風景|週間スケジュール

きらびやかなプロジェクトの成果。でも、その裏側にあるのは、週に一度のゼミを軸にした、ちょっと泥くさくて濃い毎日です。模型やスライドを持ち寄って意見をぶつけ合ったり、現場に足を運んだり、時には夜通し手を動かしたり——。ここでは学生たちの生の声から、髙橋ゼミの「ふだん」をのぞいてみます。
週に一度のゼミ
ゼミの真ん中にあるのが、週に一度みんなで集まる時間。
同時に動いているいくつものプロジェクトの進み具合を報告し合って、髙橋先生からフィードバックをもらいます。「一回一回のゼミで、新しい学びがほんとにたくさんあるんです」「考えてきたものを、先生が“いいね”って褒めてくれた時がいちばんうれしい」。まじめに話し合っているのに、気づけばずっと笑っている——そんな空気が、このゼミらしさです。
現地視察・フィールドワーク
栃木の森、鳥取・南部町、調布のまち。プロジェクトの現場には、実際に足を運びます。
「学校の演習だと“ここからここまでが敷地です”って寸法が渡されるけど、現場だと、まず自分たちで測量するところから」。空き家を使っている人と話してみると、「自分たちが“必要だ”と思ったことと、使う人が“欲しい”と言うことが、けっこう違う」と気づく。自分の目で見て、手で触れて、はじめて分かることがあります。
設計作業・制作活動(1分の1スケール)
髙橋ゼミらしさが詰まっているのが、1分の1——つまり実物大でつくって、実際に使ってもらうプロジェクト。
「水曜が演習で、その前日はみんな徹夜。放課後に集まって、一緒に模型をつくったりスライドをつくったりする時間が、いちばん楽しい」。ベンチづくりでは金物を使わず、「ここに足がないと支えられないかな」と構造から考える。外に置けば雨ざらしになるし、カビることもある。「失敗したら、じゃあどう直そう、ってみんなで話して、また先生に見てもらう」。手を動かすうちに、“止まって悩む”より“まずやってみよう”と思えるようになった、と学生は言います。
企業・地域との協働
ベンチや看板をつくるときは、木工房や施工会社、地域の人たちと直接やりとりします。
「あたりまえだけど、メールの返信をちゃんと返す。それがめちゃめちゃ大事なんだって分かった」「欲しいって思ってるだけじゃ、物は来ない。自分たちでお金の計算もして動くんです」。発注や予算のやりくりまで、教科書には載っていない“社会に出てからも効くスキル”が、プロジェクトを通して身についていきます。
ゼミの雰囲気
入る前は「ゼミって、堅くて、きっちりした会議みたいなもの」だと思っていた
——そんな学生が口をそろえて言うのが、「とにかく声を上げやすい」こと。「意見も出しやすいし、話し合ううちにどんどん高め合える感じがして、毎週楽しい」。先輩と後輩の“どろどろ”もなく、「みんな先輩が大好き」。プロジェクトの引き継ぎも、卒業制作の進め方も、「先輩へとにかく聞きやすい」。研究室そのものが、そういう空気なんだそうです。 その空気の真ん中にいるのが、髙橋先生。学生たちは、先生のことを「お父さんみたい」と言います。学内では、即興でいろんなことをやってのける建築の先生。いっぽう学外のプロジェクトの現場では、地域の人たちと一緒になって動きます。「学校でも学外でも愛されてるんだなって、人と関わっている時にふと垣間見えるんです」。やる時はしっかりやるメリハリがありつつ、ボソッとつぶやいた一言に、みんなでツッコむ。そのあとにこぼれる笑顔が、またすてきなんです。真剣さとやわらかさ、その両方を持った先生です。
学生たちのお気に入りの場所
ゼミの外にも、学生たちの“居場所”があります。よく名前が挙がるのが、10階のラウンジ。そして、建築の学生がよく使う自習室——通称〈1023教室〉です。真ん中に大きなテーブルがあって、水曜の放課後になると、みんなで荷物を広げ、模型をつくったり木を切ったり。「わいわい騒ぎながら作業できるのが、すごくいいんです」。もうひとつ、こっそり人気なのが11階の一人用の席。「卵みたいに囲われていて、隠れられる。ホテルにありそうな感じで、窓からの景色もいいんですよ」。にぎやかな場所も、ひとりになれる場所も。校舎のあちこちに、学生たちの時間が流れています。
参加した学生さんのコメント
「大学の課題なら、図面の数字を少しごまかしても、模型もちょっとくっつけちゃえば、なんとかなっちゃうんです。でも1分の1で、本当に人に使ってもらうものは、外に何年も雨ざらしで置かれることまで考えなきゃいけない。細かいところまで、手が抜けない。そこまでちゃんとやり切れたことが、いちばんの経験になりました」(4年生)

■ 高橋先生をもっと知るための10のこと

01 走りながら考える
建築はもちろんですが、頭の中で最初に閃いたアイデアはどうすれば実現可能になるか、一旦スイッチが入ると、そのことばかり考えています。
学生時代からの習慣で、疲れた時こそ、身体を動かすようにしているのですが、そんな時にアイデアの小さな点群が線で結ばれ、実現につながる大きなボリュームになることが多いです。思考を常に走らせることが大切です。夢の中で閃くこともあり、その内容は意外に記憶に残っているものです。脳をずっと動かしていたのかわかりませんが、起床時にはかなりぐったりしています。
02 心地のよい場所を探す、つくる
これは幼い頃から変わっていません。自分が長く過ごす環境はとにかく快適な場にします。
これは設計においても一緒です。気持ちのよい風が抜けること、光と影のコントラストが美しいこと、静かであることが条件です。私は集中モードに入ると、水の中にいるように一切音が聞こえなくなるので無音です。自分自身をノイズキャンセリングできます。
ちなみに研究室は私にとって居心地が悪い環境です。
03 コップらしいコップは新しさを忘れない
あなたの大切にしている言葉はなんですかと聞かれた時に答える言葉です。
これは学生時代にふと思い浮かんだ記憶があります。思いついて紙にメモして、壁にピンで留めていました。画家のカール・ラーションは「正しく古いものは永遠に新しい」という言葉を残していますが、それにインスピレーションを受けているのかもしれません。流行を追って新しさだけを売りにしたものは、流行が去れば真っ先に古びます。逆に、本質に根ざしたものは、もともと一時の新しさに頼っていないので、古びようがない。私はそういう建築や社会の仕組みをつくりたいと常々思っています。
04 何事も経験に勝るものはない
やらなかった時の後悔の方が圧倒的に大きいので、迷ったらとにかくやってみる。
やってみて失敗してもいいじゃないか、それだって自分のエッセンスになる。と思って行動しています。よく手を動かすことすらせず、考えることすらせず、やらない理由を探す人がいますが、とてももったいないなと思ってしまいます。失敗や無駄と思えることこそ、学生のうちにたくさんしておいたほうがよいです。何事も経験知です。
05 目的なき散歩も必要
常にアートが目に入る環境で育ったせいか、今でもアートを見ることが大好きです。
表参道や六本木、日本橋あたりの仲のよい知人のギャラリーに、ふらりと遊びに行ったりします。お昼ご飯を食べるのも忘れて、いくつかのギャラリーを巡るのですが、目的なく歩いていたつもりでも、帰宅後にあるひとつのテーマ、しかもその時に考えているテーマで繋がることに気づき、無意識のうちにそういう行動をしている自分を発見して、とても嬉しくなります。
06 原風景は生まれ育った空間
生家はスーパーゼネコンの設計部に在籍していた祖父が初孫(私)誕生祝いとして設計し、施工もその企業が手がけたものでした。
茶道の大きな稽古場のある数寄屋でありながらも、モダンなリビングのスキップフロアや色鮮やかな緞通(だんつう)、竹で吊られているように見える階段をはじめ、至るところに本物の材料、極めてクオリティの高い技術と意匠が施されていました。私と同じ年齢の住宅ですが、今でも一切狂いがない。小さい頃は何だか古めかしい家だななどと思っていましたが、今になってみるとちっとも古さを感じないのです。それこそ「コップらしいコップは新しさを忘れない」ものなのかもしれません。ちなみに祖父からの小学校入学祝いは、三角スケールと目盛りのない三角定規でした。祖父のいない場所で母に「こんなものいらない」と言ったそうですが、実は今も愛用しているのがそのプレゼント。かなり黄色く(茶色く)なった三角スケールと傷だらけで欠けのある三角定規です。
07 ライバル(仮想敵?)をつくる
ライバルと競い合うことは自分自身だけでなく、互いに成長する機会であると思っています。
WSAの森プロジェクトを一緒に進めている東京電機大学の笹谷真通先生が、実は学生時代、ライバルの一人でもありました。彼は設計課題もサラリとこなし、爽やかな風をスタジオに吹かせていました(今もですが)。いつも僕らは友人たちと設計課題の上位を競っていました。3年次に建築設計スタジオへ進めるのは学年の1割程度。数にして15〜20名です。その先にとても厳しい課題が待ち受けているのですから、本気で乗り越えられる人間だけが残るフィルターは必要だと思います。彼はてっきり設計スタジオに来るものだとおもっていたら、なぜか構造スタジオへ。のちにARUPで大活躍するわけですが、建築家の思考がわかる構造家だからこそではないかと思っています。当時はライバルでも今は同志。あの頃切磋琢磨したおかげで今がある、そんな気がしています。ちなみに、六本木ヒルズの森アーツセンター ミュージアムコーンで数多くの賞を受賞した、ニューヨーク在住の構造家・仁藤喜徳さん(Yoshinori Nito Engineering and Design PC 代表 通称:Ynedpc)も同級生です。

左からmt2aパートナー・松下佳介氏、真ん中・ラム・ワイコン氏、笹谷真通氏
お二人ともアラップの出身で、こちらが提案するアクロバティックな構造デザインをいかにして実現するか、一生懸命考えてくれます。
08 建築やデザインはシャドウワークではない
「シャドウワーク」とは哲学者イヴァン・イリイチが提唱した言葉です。
学生と一緒に取り組むわけだから、建築やデザインのアウトプットなんてボランティアですよね、という方が時々いらっしゃいます。
基本的に私はそのような方々と一切仕事をしません。そういう方々がいること自体が建築業界、デザイン業界全体、ひいては社会全体のクオリティを下げることに繋がっていると強く思っています。私たちの業界だけでなく、シャドウワークが世の中を幸せにするとは思えません。
09 楽しみながら取り組むこと
子どもの頃、私の部屋にはいつもダンボール2箱分のレゴブロックが床いっぱいに散らばっていました。
毎日それを引っ張り出しては、何かをつくっては壊し、またつくる。色とりどりのパーツを眺めながら、これとこれをつないだら何になるだろうと考えている時間が、たまらなく好きでした。
今の私の仕事の仕方は、あの頃とほとんど変わっていません。
設計でも、建築やまちの仕組みづくりでも、まずクライアントから与えられた要求を頭の中で全部バラバラに分解します。一度大きく放り投げるように崩して、色とりどりのレゴのパーツのように役割を与えて置き換え、それらを線で結んでいく。
このときだけは、紙に描くことも、記録に残すことも一切しません。あえて、です。その間にも別の仕事が並行して進んでいきますが、数時間、あるいは1日経ってもなお頭の中に鮮明に残っているイメージ、それだけが本物だと思っているからです。忘れてしまう程度のものは、その程度のもの。最後まで居座ったイメージや仕組み図を、ようやくスケッチブックやiPadに落とし込みます。それがすっと出てきた瞬間の嬉しさは、何にも代えがたい至上の喜びです。
難しいタスクほど、形にするまでは苦しい。
でも私にとっては、それを考えている時間こそが一番楽しい。私は自分の人生を楽しむために建築を選んだのですから、その楽しさは、これから出会う学生のみなさんにもぜひ分け与えたいと思っています。
10 新しい扉を開けること
今までで一番辛かったことは何かと聞かれれば、博士論文を仕上げることだったかもしれません。それに比べれば一級建築士試験は楽なものです。
大学院建築学専攻初の博士号取得予定者ということで、教授陣の期待も大きく、しかもハードルがとんでもなく高い。大学教員になってその理由がわかりました。他専攻の先生方を納得させるには、数とクオリティで勝負するしかないのです。
自分の設計活動と並行して、これまでにない研究テーマに取り組んでいたので、入学から学位取得まで、一時は体調を壊すほどの日々でした。
研究室の後輩である、東北学院大学の恒松良純先生や日本大学の浦部智義先生はじめ、研究チームの優秀な後輩たちにも助けられ、先輩である千葉大学の鈴木弘樹先生を目標(仮想敵?)と見立てて、何とか書き上げることができました。
壮大で先の見えないテーマに挑んでよかったと、今では思います。
博士論文が完成した時に、恩師である船越徹先生が「大輔なぁ、パイオニアっていうのは本当に大変なんだよ。よくやったよ。」とボソッとおっしゃってくださったその一言が今でも忘れられません。
今だからこそお話しすることが出来ますが、かつて他の大学院を目指していた際、船越先生に推薦状をお願いしたことがありました。しかし、先生は「君はここで博士論文を書くべきだ」とおっしゃって、推薦状を一切書いてくださいませんでした。当時はその真意を十分に理解できませんでしたが、博士号を取得して、その理由がようやく分かったような気がしました。
ご存じの方も多いと思いますが、設計や研究に関してはとんでもなく厳しい方でしたが、普段はユーモアのある、とても魅力的な先生でした。偉大な先生のもとで学べたことを本当に感謝しております。
他の学生は全員名字で呼ばれていたのに、私だけなぜ名前で呼ばれていたのか、その理由を知りたかったです。
いつになっても恐れずに、世の中のために新しい扉を開けていく姿勢だけは忘れないようにしたいです。
■ 研究者紹介
髙橋大輔(Daisuke takahashi)[教授]
先生からひと言
専門は建築計画学(空きストックの再生、コミュニティ形成、地域デザイン)。調布市空家等対策協議会の会長や同市のまちづくりプロデューサーを務めるなど、各地の自治体と協働しながら、継続できる地域の拠点づくりに取り組んでいる。学外では、設計事務所mt2a(松下・高橋アーキテクツアンドアソシエイツ)を主宰し、地域に開かれた動物病院の設計・計画手法を実践するとともに、日常時にも非常時にも役立つ「フェーズフリー」な動物病院づくりを進めている。また、オルタナティブ・アートスペースDAVAを運営するほか、東京文化資源会議の神保町プロジェクトにも参加し、建築・アート・本のまちを横断する実践を続けている。
地域に入り、多様な人と協働しながら社会課題を建築で解決する
私のゼミでは、教育・研究・社会貢献を一体的に進める「Community Engaged Learning(CEL)」の考え方をもとに、「地域の拠点づくり」に取り組んでいます。学生たちは、子どもから高齢者まで年齢も立場も異なる人たちと話し合いながら、その地域の空きストックの活用法を考え、改修だけでなく、その後の使い方も含めた管理・運営までの企画提案を行います。活動フィールドは、東京都大田区や調布市といった都市部から、鳥取県南部町、栃木県さくら市喜連川といった地方まで広がっています。建築が多くの人との協働によって成り立っているのと同じく、地域の問題も、そこに住む人々や企業、行政との関わりなくしては解決できません。都市と地方の両方の現場でそうした交流や協働を重ねることで、コミュニケーション力が鍛えられるとともに、リアルな社会課題を建築で解決するための手法を身につけることができます。
■ 略歴・著書
略歴
- 1988年3月
- 秋田県立秋田高等学校 卒業
- 1993年3月
- 東京電機大学工学部第一部建築学科卒業
- 1993年4月 – 1995年3月
- 東京電機大学大学院工学研究科建築学専攻 博士前期課程修了
- 1995年4月 – 1998年3月
- 東京電機大学大学院工学研究科建築学専攻 博士後期課程単位取得満期退学
- 1995年4月〜1999年3月
- 有限会社 ヒロ・アーキテクツアンドプランナーズ一級建築士事務所設立に参画 パートナー、チーフアーキテクト
- 1999年3月
- 博士(工学)課程博士号 取得
- 1999年4月 – 2001年3月
- 国立小山工業高等専門学校 建築学科 常勤講師
- 2001年4月 – 2007年3月
- 同 助教授
- 2007年4月 – 2010年3月
- 共立女子大学 家政学部・建築・デザイン学科 専任講師
- 2010年4月 – 2015年3月
- 同 准教授
- 2015年4月 – 2023年3月
- 同 教授
- 2023年4月 – 現在に至る
- 共立女子大学 建築・デザイン学部 建築・デザイン学科 学部長 教授
- 2011年4月 – 現在に至る
- mt2a 松下・高橋アーキテクツアンドアソシエイツ設立 パートナー
- 2026年4月 – 現在に至る
- アートオルタナティブスペース davo/dava 共同設立
著書

共著
■ 髙橋ゼミで、未来のまちづくりを学ぼう
髙橋ゼミナールの3つの主要プロジェクトは、それぞれ異なるアプローチで地域課題に取り組んでいますが、その根底には共通の学びがあります。
「地域資源を活かして、人と場所をつなぎ、新たな価値を創造する」——この姿勢が、すべてのプロジェクトに貫かれています。森の木々も、使われなくなった空き家も、見方を変えれば未来を豊かにする貴重な「資源」なのです。
建築や地域づくりに強い興味を持つあなたへ。髙橋ゼミでの実践的な学びは、単なる知識や技術を超えて、これからの社会をより良くデザインしていくための確かな力になるはずです。
ここには、教科書では学べない、リアルな経験があります。地域の人々との温かい交流があります。プロフェッショナルから直接学べる機会があります。そして何より、志を同じくする仲間との出会いがあります。
私たちのゼミで、あなたの情熱を未来のまちづくりにぶつけてみませんか。
あなたの参加を、心から待っています。











































