【11/23-2/24 @愛知】岡﨑乾二郎 ― 視覚のカイソウ
岡﨑乾二郎 ― 視覚のカイソウ
この上なく軽やかに壁に留まるレリーフ。小さなその一つの塊は、しかし建物のように豊かな空間をもち、また見る度に私たちの脳裏に異なる複数の姿を現す。
造形作家、岡﨑乾二郎(1955 年~)は、初個展「たてもののきもち」でレリーフ〈あかさかみつけ〉シリーズを発表して以来、彫刻、絵画、映像、メディア・アート、建築からテキスタイル作品、舞台美術、絵本、タイル、描画ロボットによるドローイングまで、あらゆるジャンルにおいて最前線で制作を続けてきました。さらに稀有なのは、灰塚アースワークプロジェクトにおける長期的な修景保存活動や四谷アート・ステュディウムにおける教育活動、展覧会のキュレーションや多分野にまたがる批評など、岡﨑が造形活動に劣らぬ熱量をもって、個の領分を超えた旺盛な活動を展開してきたことです。それが、およそ一人の人間の行い得る範囲を超えた広がりと、知性に支えられた深さをもっているのは、個々の作品のみではなく、それらの作品が生みだされる場所までをも岡﨑が形成、造形しようとしてきたがゆえと言えるかもしれません。
岡﨑は、この世界は決して一元的なものではなく、たがいに相容れない固有性をもったばらばらな複数の世界から成ると言います。そして、それらが一つに融合されることなく、それぞれの個性を保ったまま交通することが可能となるどこにもない場所が成り立つとき、豊かな創造性が生まれるのだという考えを堅持してきました。表現が何かを代表してしまうことを疑い、抵抗し、もっと周縁的なもの、小さなものが持つ可能性を尊重すること。岡﨑の活動が一つに留まることなく、つねに多くの人や事物とネットワークを結び、拡げてきたのは、こうした複数世界についての確信の現れだと言えます。
豊田市美術館では、2017 年に、岡﨑乾二郎の企画監修による展覧会「抽象の力」を開催しました。その展示は、抽象芸術が本来もっていた現実的で具体的な力を明らかにし、一元的なモダニズムの美術史観を軽やかに翻すものとして、多くの刺激と新たな知見を私たちにもたらしました。
その次なる試みとして、岡﨑自身の作品とその活動の全貌をご紹介する個展を開催いたします。
見ることには、つねに回想することが含まれています。岡﨑の作品を見るたびに、私たちのいる空間の階層は次々と入れ変わり、過去、未来そして現在という時間の階層もまた、のぼったりおりたりするように改められていきます。過去に遡ってその仕事を回顧するのではなく、作品を前に回想することで、私たちの感覚が絶えず刷新されていく。この不思議で豊かな体験を、是非、豊田市美術館の空間で実感していただきたいと思います。
2019年11月23日(土)~2020年2月24日(月・祝)
10:00-17:30(入場は17:00まで)
※休館日:月曜日、12月28日(土)~1月4日(土)
ただし1月13日(月・祝)、2月24日(月・祝)は開館
豊田市美術館
(愛知県豊田市小坂本町8丁目5番地1) ⇒アクセス
一般:1,300 円(1,100 円)/高大生900 円(800 円)/中学生以下無料
*( )内は前売り及び20名以上の団体料金
*前売券の販売は11月22日まで
*観覧料の減免対象者及び割引等についてはホームページをご確認いただくか、豊田市美術館へお問い合わせください。
● 2002年のセゾン現代美術館以来17年ぶりとなる、美術館での大規模な個展。豊田市美術館のほぼ全館を使用し、大小様々な部屋ごとに次々と展開する展示を体感していただきます。
● 絵画、彫刻に加え、レリーフ、テキスタイル作品、タイル、ドローイング、ポンチ絵など、多岐にわたる作品を展示。岡﨑乾二郎の多面的活動を余すところなく紹介します。
● 初期代表作〈あかさかみつけ〉に先立つ、原点的作品〈かただみのかたち〉を展示。1979年のBゼミ展以来、初の展示となります。
● 新作絵画、新作彫刻に加え、新たなタイル作品やドローイングも展示します。
● 岡﨑乾二郎が、主著『ルネサンス-経験の条件』で明晰な分析を行った「ブランカッチ礼拝堂壁画」を再現。AR(拡張現実)の技術を用い、各壁画の登場人物たちの複雑な重なり合いを体験していただきます。それにより、岡﨑乾二郎の絵画やレリーフ自体が、同じく、様々な色や形の交換・交通によって構成されていることが実感されます。
「岡﨑乾二郎講演会」
■日時
2019年12月22日(日) 14:00-
■会場
美術館1F 講堂
■講師
岡﨑乾二郎(本展出品作家、批評家)
■定員
150名(要事前申込・先着順)
■参加費
無料
■申込み
①氏名、②電話番号、③住所
を記入の上、件名を「岡﨑乾二郎講演会」として、豊田市美術館までメールまたはFAXにてお申込みください。
【申込受付開始】
2019年11月12日(火)10:00-
※上記の時刻以前のお申込みは受け付けません。
【申込先】
E-mail:gakugei@city.toyota.aichi.jp
FAX:0565-31-4983
※申込1件につき、1名のみとします。
豊田市美術館
株式会社LIXIL、株式会社中川ケミカル