「伝わる」プレゼン資料の作り方 〜基礎編〜
「伝わる」プレゼン資料の作り方 〜基礎編〜
自分の作った作品を人前で発表する機会の多い建築系学生にとって、「プレゼン資料づくり」というのは、必ず乗り越えなければならない大きな壁ではないでしょうか。学校では、模型作品の作り方は教えてくれても、それを説明する資料の作り方まではなかなか教えてもらえないものです。 初めてのプレゼンを前に、発表の準備をどう進めたらいいのか迷ってしまう人も多いと思います。
そこで今回は「まだプレゼン資料を一度も作ったことがない」というかたや、「もっとプレゼン資料をブラッシュアップしたい」という学生さんのために、魅力的なプレゼン資料の作り方の基本をご紹介します。
■プレゼンの基本である4つの流れを知り、「伝わる」資料を作ろう
魅力的なプレゼン資料を作るためには、「プレゼンの基本」を知ることがとても重要です。基本を無視して雰囲気だけかっこいいプレゼン資料を作ろうとすると、それは概して見た目だけよくて中身のないものになってしまうでしょう。裏を返せば、基本にさえ忠実に沿っていけば十分魅力的なプレゼン資料を完成させることができます。
では早速資料づくりの準備に取り掛かりましょう。多くの学生さんが、パワーポイントやKeynoteなどを利用されていると思いますが、一番やってしまいがちなのが、いきなりこれらのソフトをいじってレイアウトなどを作ろうとしてしまうことです。しかし、実はそれに取り掛かる前にしなければいけないことがたくさんあるのです。
■1. 一番伝えたい「テーマ」を決める
まずプレゼン資料を作成するにあたって「何を一番伝えたいか」ということを最初に設定しましょう。そうしなければ、時間をかけていろいろな情報を詰めた割には、結局何が言いたいのかよくわからないというプレゼンになってしまいます。
一番他人の印象に残るのは「ある一つのことをシンプルに分かりやすく伝えている」プレゼンです。オリジナルの建築プランや設計内容をプレゼンするという時には、「そのプロジェクトを通してあなたが一番伝えたい、強い個性は何か」ということをテーマにすると良いでしょう。
■2. テーマを裏付ける「リサーチ」をする
テーマが決まったら、次はそれを裏付ける情報収集に取り掛かりましょう。「リサーチ」とも言いますが、あなたの作品のコンセプトの元になったものをもう一度しっかりと調べたり、類似の作品が世の中にないか、そして、テーマの説得力が増すようなデータを参照したりすることで、あなたのプレゼン内容に深みをもたせます。
この情報の精度が高ければ高いほど、あなたの作品の魅力や信頼度は上がりますので、審査員や監修を説得するようなつもりで、この情報収集に取り組んでみましょう。
■3.あなたらしい プレゼンの「スタイル」を考える
もうひとつ、資料づくりと同時に考えておかなくてはならないのが、どのようなプレゼンのスタイルを目指すのか、ということです。世界的に有名なプレゼンターといえば、アップルCEOのスティーブ・ジョブズがよく挙げられますが、彼を真似たプレゼンをすれば成功するかといえば、そんなケースは稀です。
よいプレゼンをするには自分のキャラクターを理解する必要があり、それに沿った無理のないスタイルを選択することが重要です。論理的なプレゼンなのか、情熱的に自分の感情を詰めるプレゼンなのか、コミュニケーションをとりながらインタラクティブに進めていくプレゼンなのか、プレゼンにも様々なスタイルがありますので、それによって用意するプレゼン資料も全く違ってきます。
自分の性格を理解しつつ、どのようなプレゼンのスタイルがいいのかということを、資料を作り始める前に決めてしまうのがいいでしょう。色々な著名人のプレゼン動画を見て、自分に合ったスタイルを見つけて見るのがオススメです。
■4. プレゼン資料の「流れ」を考える
ここまできたら、いよいよプレゼン資料作成の作業に取り掛かります。上で決めたプレゼンスタイルに基づき、どこに何の情報を、どの順番で、配置するのかを具体的に決めていきます。
このときにやってしまいがちなのが、調べたり考えたりした情報をすべて詰め込んでしまうことです。あれもこれも伝えたい気持ちはわかりますが、あなたのテーマを伝える上で、不必要に思えるもの、過剰だと思うものはどんどん削っていきましょう。
また、論理的なプレゼンを組み立てる場合でも、情熱的なプレゼンを展開する場合でも「起承転結」を作ることを意識して流れを作っていきましょう。そうすることでプレゼン内容にメリハリができ、聴衆にメッセージが伝わりやすくなるからです。
「起承転結」の上手な作り方は、この記事を参照すると良いでしょう。(*リンク:「物語ならどう描く?起承転結を作って分かりやすく説明する方法」)
●プレゼン資料のレイアウトについて
・スクリーンに映した時に読めるくらいの文字を使う(11pt以下は基本使わない)
・横書きの場合、人の目線は左から右、上から下とくるので、読む順番を意識して情報を配置する
・一枚の中に入れる文字は数行にして、文字だらけにしない
など、資料のレイアウトにはマナーとも言えるいくつかの注意点がありますが、一番大切なことは「一つ一つのスライドをシンプルに、重要なメッセージだけに絞る」ように意識してスライドを作ることです。資料はあくまでも、あなたの話す内容を裏付ける補足的なものでしかありませんので、詰め込む必要はないのです。それを心がけるだけでずっと魅力的なプレゼン資料ができあがります。
●特殊効果に関して
最近のソフトでは、アニメーションを駆使した特殊効果を簡単に取り入れることができます。しかし、そのような小細工を入れすぎてしまうと、本来伝えたい主旨がよくわからなくなり、ごちゃごちゃとした印象を聞き手に与えてしまうので、やりすぎはオススメしません。
プレゼンに緩急をつけるためのポイントとして使うのには効果的ですが、あくまでも大切なのは内容を伝えることです。また、その演出に凝りすぎて資料作成にやたら時間をかけてしまい、発表を練習する時間が無くなってしまっては本末転倒です。特殊効果はなくても魅力的なプレゼンは十分作れるということを覚えていてください。
●写真選びのコツ
プレゼン資料で使う写真は、「伝えたい情報を視覚的に補う」ものでなくてはなりません。きれいで見栄えのする写真であれば良いというものではないのです。
例えば、建築の模型を撮る場合は「全体像がわかる」引きの写真と、「細かい特徴」を捉えた寄りの写真を用意する必要があると思いますが、あなたがプレゼンで伝えたいことがその写真に的確に反映されているか、よく確認するようにしましょう。
なお一眼レフなどは持っていなくてもスマホで十分撮影可能です。ただしスマホで撮る場合はズームに限界がある場合があるので、その場合はマイクロレンズを別途購入するなど工夫していきましょう。
また、印象に残りやすい写真を撮るためには「写真の構図」を考えることも重要です。これは「写真の中に何をどれくらい、どの位置で入れるか」というテクニックのことですが、この構図を意識するだけであなたの写真は劇的にクオリティが上がります。より詳しく知りたい場合は、関連本などを見て勉強してみると良いでしょう。
■まとめ
プレゼン資料づくりは時間と労力のかかる作業ですが、基本をしっかり押さえることが魅力的な資料を作る一番の近道です。見た目のテクニックに走らず、「あなたは何を伝えたいのか?」を根幹に、ぶれないメッセージをひとつずつ込めていけば、必ず魅力的なプレゼン資料は完成します。