OFFICIAL BOOK制作陣が勝手に選ぶ 「せんだいデザインリーグ」歴代日本一の中の日本一@フジタサトシ
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もちろん、作品を一同に並べて審査することはできないし、それぞれの作品が計画された時代背景や選ばれた状況も違うため、一律に比較することは難しい。しかし、そこは、Luchtaのお気楽企画! みなさんの(勝手な)要望に何とか応えるため、乱暴ながら、長年にわたってSDLを見てきた7人に、それぞれが審査過程を見てきた中で「この作品こそが歴代の中で真の日本一」と思う作品を選んでもらった。選者はオフィシャルブック関係者、会場であるせんだいメディアテーク関係者など、審査に直接は関わらなかった、いわば外野陣である。建築的な優劣に限らず、それぞれの評価軸によって、特に印象に残った作品が選ばれている。
果たしてどの作品がどんな理由で選ばれているか、期待して読んでほしい。そして、各年の審査の様子や作品のさらに詳しい情報は、オフィシャルブックでご確認を!!
話を聞く皆が、実現させたい卒業設計
SDL2012日本一『神々の遊舞』今泉 絵里花(東北大学)
2012年3月4日の仙台には雪が降り積もった。東日本大震災から1年後、10回目の卒業設計日本一決定戦のファイナル審査(公開審査)は、東北大学百周年記念会館川内萩ホールで開催された。
審査員長に伊東豊雄、審査員に塚本由晴、重松象平、大西麻貴、櫻井一弥。ファイナリスト(10作品)には、「全部『震災もの』を選んでもいいくらい」(伊東豊雄のセミファイナルでの発言)を反映して東日本大震災に関連する卒業設計が4作品選ばれた。最後は満場一致で今泉絵里花の『神々の遊舞』が日本一に輝いた。
『神々の遊舞』は、宮城県石巻市雄勝町に海と山を結ぶ橋を作る。その橋は雄勝に600年来伝わる「雄勝法印神楽」を舞う舞台であり、日常は人々が集う場所になる。
卒業設計を実施計画と勘違いしているとも取れる、ファイナル審査での重松象平の質疑に『神々の遊舞』の特徴が現れている。「なぜ今、この計画を実行できないの? 実現の障害となるものは、何?」。
伊東豊雄も日本一決定時の評価に「僕が『みんなの家』でやりたかったことはこういう場所を作ることで、『神々の遊舞』は僕がやったものよりずっとすばらしい」という賛辞を贈っている。
『神々の遊舞』は、誰もが素直に実現したらいいなと感じさせられる提案である。しかし、ファイナル公開審査での本人のプレゼンテーションを聞くまでのプロセスを整理していると、「よく日本一になれたな」と感じさせられた。
予選での得票は6/9(満票9のうち6得票)、満点ではないが不足ない得票。
セミファイナルでは、各審査員が会場を巡回して、3点票(30票)と1点票(20票)を投じるが、『神々の遊舞』には、4点しか入っていない。ちなみにセミファイナル1位(日本二を受賞)の『記憶の器』は22点。ファイナリスト10組の合計得点を上位から順に列記すると22/13/12/11/10/10/8/6/4/4となる。『神々の遊舞』の得票は、塚本由晴の3点票と重松象平の1点票だけである。展示会場で審査員のほとんどが、パネルと模型から内容を読み込むことなく通り過ぎてしまったということか。
とにもかくにも津波で住居を失った人たちのために、雄勝に橋を作って舞台化する『神々の遊舞』を浮上させたのは塚本由晴の視点にある。
しかし、現実は『神々の遊舞』の前に立ちはだかる。(石巻市雄勝町の震災前に約4,300人だった人口は7割減の約1,300人になった。市は2012年末に住宅の高台移転を決定し、沿岸を人の住めない災害危険区域に指定した)『東京新聞』2019年3月11日夕刊より。
写真・文:フジタ サトシ
フジタ サトシ(SDL2006よりオフィシャルブックの編集を担当)
全国で建築を学ぶ学生の卒業設計作品を一堂に集め、公開審査によって日本一を決める「せんだいデザインリーグ日本一決定戦」。その模様を余すことなく伝える公式記録集がここに刊行!
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