• HOME
  • 記事
  • 単行本
  • 【BOOKS】『素材との対話』 セルフビルドの茶室から描く24の補助線| 企画:近畿大学建築学部 賛八会 編著:垣田博之+垣田研究室 発行:建築資料研究社

【BOOKS】『素材との対話』 セルフビルドの茶室から描く24の補助線| 企画:近畿大学建築学部 賛八会 編著:垣田博之+垣田研究室 発行:建築資料研究社

【概要】
本書は2015年から近畿大学建築学部と賛八会(近畿大学建築学部同窓会卒業生部会)共催で実施されている「再生材料の茶室プロジェクト」のこれまでの6つのプロジェクトを、プロセスも含めたその過程における学びを、24の切り口で並列的に分析し図や表にまとめ、プロジェクト・ブックの要素をもちながら、それを超えた普遍的な建築の可能性を示すことを目指したものです。

「再生材料の茶室プロジェクト」は、大学内のカリキュラムとは別に学生個人またはグループが参加する「近畿大学建築学部設計コンペティション」で最優秀となった作品を、設計した学生が主体となり施工まで行う実施プロジェクトであり、コンペティションのテーマは、循環型社会に対応する素材を毎年選定し、それを材料とした茶室としています。東大阪を中心とした地域のものづくり関連企業の協力を得て、素材の生産地への訪問から、解体と素材の再生まで、ものづくりの街の大学での、小さなセルフビルドであるがゆえの広がりをもっています。

◆商品名  素材との対話 セルフビルドの茶室から描く24の補助線
◆著者   垣田博之+垣田研究室 編著
◆発売日  2024年2月10日
◆定価   1,980円(本体1,800円+税)

【詳細・ご購入はこちらから】
販売サイトへ

イントロダクション

旅人が、石切職人に問う。「何をしているのですか。」

その人は答える。
「見て分からないか。この忌々しい石を切っているのさ、食っていくためにね。」

また、旅人は別の職人に同じことを問う、「何をしているのですか」と。
「難しい仕事なんだ。でもコツがある。それを身につけて親方になるのが目標さ。」

その答えに、なるほどと思いながら、旅人は、さらに3人目の職人に同じことを問う。
すると、彼は空を見上げながら、こう答える。

「この石は、私たちの街の、人々の心の拠り所となる素晴らしい大聖堂の一部になるのです。そのときのことを心に浮かべながら仕事をしています。」

建築家は、建築が実現する現場に近いところにいて、その空間が存在する意味を考えることができる。それに比べると、生産地ではたらく石切職人たちは目の前の仕事で精一杯になり、切り出した石からつくられる空間への想像力をもつことは難しいかもしれない。はじめの2人の職人に、3人目のような視点を身につけてもらうためには、どうすればよいだろう。

これから実現する建築のドローイングや模型を見せ、全体像を理解してもらうのはどうか。あるいは、別の街にある大聖堂を案内して、その素晴らしさを説明してあげるのもいいだろう。しかしやはり最善の方法は、大聖堂の完成を待ち、自分の仕事によって実現した空間を自ら体験してもらうことではないだろうか。

建築を学ぶ学生たちも、実体験をもたないという意味において、はじめの2人の石切職人に似ている。
だからもし、空間を構想し、実際にそれを自分でつくり、完成した空間を一度でも体験してもらうことができたら……そんな想いから、このプロジェクトは始まった。

さらに、石材を選ぶときに必ず石切場まで足を運んだというミース・ファン・デル・ローエにならって、用いる素材の生産地を訪れ、石切職人、いや生産者に話を聞く機会を、必須のものとしたのである。


【目次】

Ⅰ. コンテクストから着想へ From Context to Idea
01 サステナビリティ Sustainability
02 地域性 Regionality
03 物性 Physical Properties
04 リファレンス Reference
05 スタディ Study
06 気づき Realization
07 アプローチ Approach
08 材料 Material
ディスカッション Discussion
  山田宮土理 (構法・材料研究者)
  Midori Yamada
  (Researcher on Construction Materials and Methods)

Ⅱ. 設計と制作のあいだ Between Design and Production
09 部材 Elements
10 インターフェース Human Interface
11 ソーシャルディスタンス Social Distance
12 スケール感 Feeling of Scale
13 施工手順 Construction Procedure
14 工程 Schedule
15 問題解決 Breakthrough
16 構造 Structure
ディスカッション Discussion
  阿波野昌幸 (構造家) 
  Masayuki Awano
  (Structural Engineer)

Ⅲ. ディテールがつくる現象 Phenomena Created through Details
17 開口部 Opening
18 接合 Joining
19 透過性 Transparency
20 光 Light
21 陰影 Shadow
22 たわみ Deflection
23 佇まい Figure
24 写真 Photography
ディスカッション Discussion
  母倉知樹 (写真家)
  Tomoki Hahakura
   (Photographer)

・作品写真 Photos of the Works
  間伐材 Thinned Timber
  再生ダンボール Recycled Cardboarrd
  竹 Bamboo
  紙管 Paper Tubes
  葡萄蔓 Grapevines
  ペットボトル Plastic Bottle

・テキスト Text
  垣田博之 (建築家) 
  Hiroyuki Kakita
  (Architect)
コンペティションと制作の記録
Archives of the Competition and Production

著者紹介

垣田博之
Hiroyuki Kakita

建築家、近畿大学建築学部准教授。京都大学工学部化学工学科を経て、建築学科に転科し、卒業(卒業設計賞受賞)。パリ、ラ・ヴィレット建築学校(文部省給費交換留学生)を経て、京都大学大学院修士課程終了(川﨑清・竹山聖研究室)。竹中工務店設計部勤務ののち現職。垣田博之建築設計事務所主宰。「UTSUROI TSUCHIYA ANNEX」でグッドデザイン賞、AACA賞・優秀賞、日本建築設計学会賞、大阪建築コンクール大阪府知事賞。日本建築学会作品選集(2001・04・08・09・24)。著書に『名建築のデザインに学ぶ製図の基礎』(学芸出版社)がある。

山田宮土理
Midori Yamada

早稲田大学理工学術院准教授、博士(工学)。専門は建築構法・材料。早稲田大学理工学部建築学科卒業、同大学修士課程、博士後期課程 修了、同大学建築学科助手、近畿大学建築学部助教・講師を経て、現職。伝統土壁構法の力学特性に関する研究で博士学位を取得。その後日本各地の土を使った土着建築の調査や、植物材料の活用に関する研究などに取り組んでいる。住宅「あざみ野の土」(建築設計:Eureka)で土の構法提案・施工を行う。日本建築学会大会材料施工委員会 若手優秀発表受賞、SDレビュー入選、日本建築仕上学会論文奨励賞受賞。

阿波野昌幸
Masayuki Awano

構造家、近畿大学建築学部教授、学部長。大阪大学大学院卒業後、日建設計入社。30年間、超高層ビル、免震構造建物など様々な建築物の構造設計に従事。プレストレストコンクリート(PC)に関する研究にて博士(工学)取得。主な設計作品:中之島フェスティバルタワー、本町ガーデンシティ、新ダイビル、ダイビル本館、阿南市庁舎、新住友病院、USJホテル京阪、神戸国際会館、大阪市中央体育館など。受賞歴:日本免震構造協会賞・作品賞、日本コンクリート工学協会賞・作品賞、日本PC技術協会賞・作品賞、FIP AWARD、日本PC技術協会賞・論文賞。

母倉知樹
Tomoki Hahakura

写真家。村井修氏に師事。株式会社ナカサアンドパートナーズ、松村写真事務所を経て、独立。「母倉写真事務所」として建築の写真撮影を主に活動中。本書掲載の作品写真(p.97-120, 130, 134, 138,142, 146, 150)を担当。

【詳細・ご購入はこちらから】
販売サイトへ

関連記事一覧