• HOME
  • 記事
  • 単行本
  • 【建築系学生におすすめの本】(2024年 日本建築学会著作賞)著者:後藤伸一『 建築と規範』利己から利他の建築へ|発行:建築資料研究社

【建築系学生におすすめの本】(2024年 日本建築学会著作賞)著者:後藤伸一『 建築と規範』利己から利他の建築へ|発行:建築資料研究社

概要

人が生活していくことは、身近な建築(すまい)や周辺環境(まちなみ)と関わり、多くの時間を建築と共に過ごすことに繋がる。こうした認識の下、私たちの社会の中での建築とのかかわりを考察する一つの方法が、「規範」という概念で串刺しにした倫理、法、職能や建築の生産に通底する倫理的視点である。

本書は倫理や法、制度を切り口として建築物を建築する規範(ルール)の意味について考え、同時に建築を具体のモノ(建築物)にする建築生産のルールを通して、単なる所有(利己)を超えた建築の社会性や倫理的公共性(利他)の獲得の意味を構築する契機となるものと位置付けている。

基本的に(利己に対する何らかの制限、制約に係る利他につながるイメージを含む)公共という概念を倫理に帰着させて考えることで、「利己の建築」が具体の場所にかかわる建築空間において、生活の意味や快適性を個人の体験を超え共感として共有していくこと、そのことを含めて他者に寄り添い、人生における善きことの感覚(倫理的視点)に繋げていくことで、広く建築や環境の公共性の在りようを見つめていくことが「利他の建築」に繋がっていくと考えている。

著者紹介
後藤伸一(ごとう・しんいち)
建築家。1949年東京・麻布生まれ。早稲田大学大学院修士課程修了都市計画専攻。建築家故前川國男に師事し、山梨県立美術館、東京文化会館増築、石垣市民会館など主に公共建築の設計・監理を担当。独立後は建築士事務所を主宰しパサージュいなぎ、滝乃川学園第2成人部、おきなわ未病ケアセンターなど医療福祉施設を主に手掛ける。2016~19年まで明治大学大学院客員教授を務める。その他1983年から早稲田大学、千葉工業大学工学部・同大学院、明治大学大学院、国立琉球大学、明治大学政治経済学部、東洋大学、ものつくり大学、国士舘大学などで37年間にわたり兼任講師として建築デザイン、都市論、公共政策、倫理、建築法規等の講義を担当した。現在、東京地方裁判所、国土交通省、東京都などで建築紛争支援に係る委員等を務めている。

 ⇒ 詳細はこちら
 
試し読み  
 
本体1,980円(本体:1,800 円+税) 購入はこちらから  

目次

はじめに ―利己から利他の建築へ―

1 規範としての倫理
(1)もし私たちの誰かがこの世界で唯一の生存者であるとしたら
(2)規範について
(3)道徳について
(4)倫理について
(5)倫理のパターンとコンフリクトによる心の葛藤

2 法と倫理 -二つの社会の規範をめぐるさまざまな考え方-
(1)社会の規範
(2)法規範と法以外の規範 -どちらがより大切なのか-
(3)法と倫理の違いは「権力の関与の濃淡」という考え方
(4)法と倫理 -社会的有用性とコストをめぐる議論-
(5)法と倫理の境界の流動性について
(6)法と倫理と権力 -権力の本質/権力は本当に私たちの外にあるのか-

3 倫理と倫理学
(1)倫理学とは
(2)近代倫理学の起こり
(3)その他の思想家たちによる近・現代の倫理的思潮の流れ
(4)倫理学における倫理的責任の時間軸の考え方
(5)現代の倫理の言説と倫理学 -応用倫理学について-
(6)「正義論」と「市場主義への対抗」

4 建築と倫理的公共性 -共感という利他的平等性へ-
(1)公共とは誰のことか? -公共の福祉とは誰のための福祉なのか?-
(2)公共性と公共空間について
(3)建築の倫理的公共性 -二つの視点-

5 規範と職能 -技術者倫理の考え方-
(1)職能と職業倫理
(2)技術者倫理
(3)建築士の職業倫理と倫理規定
(4)「職能人」としての建築士
(5)倫理の学習について -予防倫理学習の重要性-
(6)「建築物の事故事例」に学ぶ -予防倫理学習の観点から①-
(7)「建築紛争」に学ぶ -予防倫理学習の観点から②-

6 ある建築家の生きざまに見る不易としての職能 -前川國男の職能観-
(1)建築家前川國男の職能観
(2)不易 -職能人へのメッセージーもう黙っていられない-

第2章 建築生産と規範・法制度

1 建築生産
(1)建築生産とは -建設と建築-
(2)建築生産の状況 -日本における建築投資-
(3)建築生産の仕組み -日本の制度化された遵法性の担保のプロセスについて-

2 建築生産と遵法性という規範
(1)建築物の遵法性の担保の意味と制度的規範
(2)法制度か倫理的規範(職能制度)か

3 建築生産と法的責任
(1)建築生産にかかわる技術者の責任論の基礎
(2)二つの法的責任 -公法上の責任と私法上の責任-

4 建築生産と制度・業務・資格
(1)建築設計の制度的な仕組み
(2)建築の設計契約 -契約は特定の相手とする法的拘束力をもつ約束事のこと-
(3)建築の設計業務
(4)建築の工事監理制度と監理業務 -工事監理と監理の違いなど-
(5)施工と施工(工事)管理
(6)職能と資格

おわりに -あとがきにかえて-
 
参考文献

 ⇒ 詳細はこちら
 
試し読み  
 
本体1,980円(本体:1,800 円+税) 購入はこちらから  

関連記事一覧