【Lab.】東京理科大学 伊藤裕久研究室 (建築歴史・意匠系)

【Lab.】東京理科大学 伊藤裕久研究室 (建築・地域計画、建築設計系)

お知らせ

2021.06.23 [プロジェクト情報追加]国分寺崖線沿いの住宅 ―「ICU教員住宅」の保存・活用計画 ―(2018-)[こちらNEW
2019.6.19 雑誌 住宅建築(建築資料研究社)に本研究室プロジェクトが掲載されました。
      特集:建築室からフィールドヘ第40回 『甲府市武田氏館跡歴史館基本計画』⇒詳細はこちら

研究室情報

概要
学校名:東京理科大学
学科名:工学部 建築学科
分野:建築史・意匠
分類:都市史、建築史、保存・再生計画
担当教員:伊藤裕久[教授]
キャンパス:金町キャンパス
所在地:〒125-8585
東京都葛飾区新宿6-3-1
HP:サイトはこちらから

キーワード
#建築史 #都市史
#都市計画史 #居住環境史
#都市デザイン #都市・集落景観
#祭礼空間 #市場空間
#コモンスペース #宗教空間
#地域文化財 #保存再生計画
#リノベーション #歴史的町並
#近代和風建築 #東アジア(中国・韓国・台湾)

主な研究テーマ

・江戸・東京に関する都市史・建築史研究
・日本の歴史的街並に関する調査研究
・東アジア(中国・韓国・日本)の都市史・建築史研究
・都市環境保全と保存・再生計画に関する調査研究とプロジェクト

コンセプト

“社会の変化”に応じて、建築や都市がどのように変わっていく必要があるのか

本研究室では、日本やアジアを中心に建築や都市デザインの歴史について、芸術、文化、技術、生活、社会、経済などの側面から総合的な調査研究を行っています。また近年では、歴史的な建物や町並み景観を生かしながら環境に優しいまちづくりをしていこうという動きが見られますが、こうした歴史的環境の保存・再生計画についても積極的に取り組んでいます。

プロジェクト紹介

江戸・東京における祭礼調査(2000-)

祭礼風景

東京の都市空間は近代化によって大きく発展し、伝統的地域コミュニティを分断・破壊してきたが、氏子域をグループの単位とした祭礼は現在まで受け継がれている。そこで地域社会における人間関係の絆としての役割を担っている祭礼には、都市形成過程や日常では見られない伝統的地域コミュニティなど、様々なものが可視化していると考えられる。
長らく、伊藤研究室では祭礼空間の変容を研究するため、様々な地域における祭礼集団を対象に、例大祭の日にあわせて研究室のメンバーを総動員し、氏子会ごとの祭礼調査を行っている。調査ではグループに分かれ祭礼集団が展開する拠点ごとにヒアリング調査と実測調査を行っており、これらの結果を日本建築学会にて報告を行っている。また、近年では主に荒川区の素盞雄神社・諏訪神社・尾久八幡神社の祭礼調査を行っており、2015年度より荒川区と共同の調査を実施している。
  • 祭礼拠点
春日大社の社家住宅の保存に向けて ―「藤間家住宅」の保存・活用計画 ―(2017-)

かつて、奈良県奈良市高畑町には春日大社の社家や禰宜が生活していた。現在でも社家町の景観を留めた門構えと土塀の連なる閑静な町並みが残されている。中でも藤間家住宅は唯一の社家住宅として現存している。一方でこの住宅も深刻な老朽化が進んでおり 2017年4月、当住宅の実測調査を始めた。調査結果として、18世紀の古い社家住宅としての建築的特徴を残しつつ、近代以降の神職の生活を垣間見ることができる貴重な住宅であることがわかった。この結果を受け、2017年10月頃から当主の方と共にこの住宅を活用しながら文化財として保存していくことを計画し始めた。現在は住宅を素屋根で覆い、足場などから屋根瓦を間近で見ることができる。また、当主の方の意向を受け、修復過程そのものを展示するrestration gallaryを行い、近隣住民の人々へ現状を発信している。2018年7月、伊藤裕久教授の講演会に付随して当住宅内で研究室側の計画案の発表などを行った。
  • restration_01
甲府市武田氏館跡歴史館基本計画(2016-2019) 「理科大・古城園WG」―堀田古城園 保存活用プロジェクト―

鳥瞰パース(下絵)

甲府市北部に位置する武田神社は、市の中心的な観光地となっているが、元来は500年前に武田氏によって築かれた居館跡であり、国指定史跡として史跡保存整備事業が進められている。
一方、その史跡範囲内に昭和初期に建てられた料亭・旅館「旧堀田古城園」があり、2012~14年に伊藤研究室で取り組んだ山梨県の近代和風建築総合調査において建築史的価値が明らかになった。旧堀田古城園の保存活用と史跡整備計画で隣接地に予定されていた総合案内施設の新築計画を一体的に進める必要があったことから、全体計画を伊藤研究室で提案することとした。
2015年3月に「理科大・古城園WG」を立ち上げ、すでに卒業制作で提案されていた学生案を素案として、甲府市と伊藤研究室の現役生、OB・OGが協力しながら2016年に基本計画をまとめている。2017年より建設工事が始まり、2019年4月に開館。

雑誌 住宅建築(建築資料研究社)に本研究室プロジェクトが掲載されました。

  • 木戸門
国分寺崖線沿いの邸宅―「はけの森美術館」と画家の生活―(2017)

中村研一邸_主屋_実測図面

明治後期より国分寺崖線沿いでは、当時の名士や文化人によって、湧水と豊かな緑に囲まれた屋敷が構えられてきた。多くの屋敷が国分寺崖線の緑地を生かした庭園として開放される中、小金井市の旧中村研一邸(以降、はけの森)はそのまま保存されている。はけの森は洋画家・中村研一とその妻・富子が1945年に小金井へ移り住んで以来の住家であり、敷地内の建物の設計を古くからの友人である建築家・佐藤秀三が行っていたことが、調査によって明らかになっており、2016年6月より主屋と茶室・花侵庵の実測調査を始めた。調査結果や中村自身の日記・雑誌原稿から、いわゆる郊外の屋敷とは異なる住環境の変化が、中村夫妻と佐藤秀三によって作り出されていたことが浮き彫りになり、日本建築学会にて複数回報告を行う他、保存活用に向けて一般の方にも分かりやすいリーフレットの作成を行った。
  • 主屋_内観
東京都中央区での近代和風建築総合調査(2017)(2007-2009)

近年進む再開発事業により、東京都心の町並みは刻々と変化している。一方で、このような時代の契機に苛まれながらも幾つかの建造物は維持・保存がされている。伊藤研究室では、このように現存している「近代和風建築」に着目し、どのように残されているのかを調査している。2007年から2009年にかけて文化庁・東京都教育委員会の下、東京都中央区の旧日本橋区と旧京橋区を対象にこの近代和風建築の総合調査を行った。2017年7月には、研究室内のメンバー総動員で再度約500棟の調査を行い、当該地域の現状を知るとともに10年間での町並みの変化について把握した。10年間で約30%の近代和風建築が取り壊されていた。また、この調査では近代和風建築の存在形態が特徴的であることが分かった。現在、老舗の料亭や旅館建築の実測調査を行う中で個々の建築の存続過程のメカニズムを明らかにすることを行っている。
  • 酒蔵1
国分寺崖線沿いの住宅 ―「ICU教員住宅」の保存・活用計画 ―(2018-)

「A・レーモンドによる教員住宅」

国際基督教大学(ICU)構内に現存する教員住宅は国分寺崖線沿いに位置し、W・M・ヴォーリズとA・レーモンドの事務所が設計した住宅が多くを占め、高い歴史的価値を有している。また、居住のための住宅としてだけでなく、長年に亘ってICUの学生や教員の交流の場として多くの人が集う空間でもあった。本プロジェクトでは、ICU構内の空き家となった教員住宅の実測調査を中心に、大学に残されている教員住宅の図面資料等の情報整理を行い、教員住宅の保存活用に向けた活動を進めている。先日のシンポジウムではその研究成果と併せて、具体的な活用プログラムを盛り込んだリノベーションの提案を行った。当日は多くの関係者の皆様のご参加のもと、活発な議論をいただいた。現在は研究に加えてICUの先生方をお呼びし、建設当初のICUの環境についての見聞を広めている。

「リノベーション設計課題エスキス風景」

教職員情報

伊藤裕久(教授)
略歴
・1980年 東京大学 工学部 建築 学科 卒業
・1986年 東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻 博士課程 修了
・1985-1987年 日本学術振興会 特別研究員
・1990-1994年 東京工芸大学 助手
先生からひと言

卒業論文・修士論文は、「研究」である以前に「教育」であるというのが、指導教員としての正直な感想である。思い返すと、自分の学生時代には、現在の研究室のような丁寧な指導は、まったくといっていいほどなかった。しかし、自由にものを考え、無駄な時間を費やしても許される心地よい「居場所」が、大学の研究室には用意されていたし、何よりも刺激になったのは、周囲で精力的に研究をこなしていた先輩や同期の仲間の存在だった様に思う。

どうすれば、こんなに斬新な視点をもつ魅力的な論文が書けるのか、恩師をはじめ、諸先輩方の研究論文の行間に費やされた時間の「凄さ」を目の当たりにすることこそが、自らの研究活動の出発点となったと言えるだろう。研究室の学生諸君には、研究室という「場」を十分に活用するとともに、20数年間に亘ってストックされた先輩たちの卒業論文・修士論文の行間に込められた努力の跡を読み取ってもらえればと願っている。

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