[新連載][建築道中 膝栗毛]【京都】日本のダーウィンこと駒井卓博士と静江夫人の暮らした家 京都市指定有形文化財「駒井家住宅」(駒井卓・静江記念館)|(公財)日本ナショナルトラスト
(公財)日本ナショナルトラストは、歴史的建築の保存とともに、長年全国各地の町並み調査やまちづくりに携わってきました。素敵な町並みは、建築と、そこに暮らす人々の営みによってつくりだされます。この連載では、(公財)日本ナショナルトラストが携わってきた、日本各地の素敵な建築と町並みをご紹介します。
駒井家住宅(駒井卓・静江記念館)は、遺伝学等に大きな功績を残した駒井卓博士(京都大学 名誉教授)の住居です。昭和初期の洋風住宅として質が高く、また建築当初の状態がよく保存されています。米国人建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズの1920年代における代表的な作品ともいえます。1998(平成10)年3月、当住宅は、歴史的、文化的価値が高い建造物として、京都市指定有形文化財に指定されました。
その後所有者である駒井喜雄氏とそのご家族が、「この建物と景観、ならびに駒井卓・静江夫妻の実績を未来に伝え残したい」と念願され、2002(平成14)年7月、土地および建物を公益財団法人日本ナショナルトラストに寄贈されました。
ヴォーリズと駒井卓・静江夫妻の共同作品「駒井家住宅」
駒井家住宅
京都市左京区北白川、白川疏水のせせらぎが心地よい桜並木の散策道沿いの一角に、駒井家住宅はあります。
外観は、当時アメリカで流行していたスパニッシュ様式をベースにしながらも赤い和瓦を使うなど周囲の環境とほどよく調和し、ヴォーリズの心遣いを感じさせます。芝生敷きとなっている庭園は、草花や樹木が季節を感じさせ、テラスの藤棚からは柔らかな光が差し込み、穏やかで心地のよい時間が流れています。このお庭では、かつて駒井家のご家族がテーブルとパラソルを出して団欒のひとときを過ごしました。
玄関から居間に入ると、思いがけず広々とした、明るい空間が広がっています。ヴォーリズは独創性や凝ったデザインよりも、住み心地を考えた健康的・能率的な建築を目指し、施主の要望に沿うことを心がけました。駒井家住宅にも、腰掛付きの出窓やふんだんに備えられた収納スペースなど、機能的な工夫が随所に見られます。サンルームの隣の和室は、普段は着物で過ごしていた静江夫人の希望に応えたものだと考えられています。玄関から左手の階段は、着物でも上がり下りしやすいように段差が低くなっており、ヴォーリズの配慮が伺えます。ヴォーリズは駒井夫妻の希望を柔軟に聞き、設計に取り入れたと考えられます。
現在も駒井夫妻が愛用した家具も残されており、当時の暮らしを思わせる温かみのある建物です。
■駒井卓博士と静江夫人
駒井卓(1886~1972)は、兵庫県姫路市に生まれ、姫路中学から東京高等師範学校に進学、1908(明治41)年に卒業後、東京帝国大学理工学部動物学選科に入学しました。1917(大正6)年に修了後、1921(大正10)年、京都帝国大学へ転じ、1923(大正12)年より2年間米国コロンビア大学へ留学し、ショウジョウバエの研究をおこないました。帰国後はわが国において新しい遺伝学を発展させました。日本遺伝学会長(1927~1928)などを歴任し、動物分類学、動物遺伝学に大きな功績を残しました。また、昭和天皇に生物学を教授された学者としても知られています。
一方、夫人である静江(1890~1973)は、四国にある丸亀教会を設立した牧師、青野兵太郎の次女として生まれ、神戸女学院英語科を卒業、卓博士の米国留学にも同行しています。後年、ヴォーリズに嫁いだ一柳満喜子とは、神戸女学院時代の学友でした。静江夫人は、京都において積極的にクリスチャン活動をした先進的な女性でした。
■駒井家住宅の特徴
外観は、当時アメリカで流行していた、スパニッシュ様式を基調とした意匠となっています。屋根は切妻屋根の赤色桟瓦葺で、外壁面はモルタルのスタッコ仕上げになっています。
内部は1階に玄関ホール、居間、食堂、6畳室を配し、2階に寝室、書斎等を設けており、洋風住宅プランの一角に和室を加えた折衷的な間取りとなっています。
室内の意匠にも随所に行き届いた設備が見られます。ホールの階段は実用性を重視したデザインでありながら、そのやわらかい曲線は造形的にも優れた表現に達しています。居間を特徴づける腰掛付きの出窓は実用的でありつつ、装飾的効果も与えています。6畳和室の上げ下げ窓と障子を併用した出窓は、和風洋風の外観と和室の意匠を巧みに融合させています。
建築MEMO
設計者:ヴォーリズ建築事務所
竣工年:1927年
敷地面積:900㎡
建築面積:154.4㎡
■まだまだあります 建築好きにおすすめの見どころ
花壇と温室
2種類のドアノブ
ドアノブに注目すると、透明と紫の2種類あることがわかります。透明はプライベート空間、紫はパブリックな空間というように、用途によって使い分けられていたといわれています。
玄関脇の収納
寝室の箪笥
京都府京都市 左京区北白川伊織町64
一般公開日:毎週金曜日・土曜日
*夏季休館(7月第3週から8月末)・冬季休館(12月第3週から2月末)
*天候等の事情により公開日・公開時間が変更となる場合がございます。
【入館料(維持修復協力金)】
・JNT会員:無料
・一般:500円
・中高校生:200円
・小学生以下:無料 *保護者同伴
・障がい者(ミライロIDまたは手帳提示):無料 *介添者1名含む
その他詳細↓
http://www.national-trust.or.jp/protection/index.php?c=protection_view&pk=1490651710
ご見学は、以下の予約専用フォームで受付いたします。
予約専用フォームに記載した注意事項をご覧いただき、ご了承いただけましたら、必要情報をご記入いただき【送信】ボタンをクリックしてください。
駒井家住宅予約専用フォーム:駒井家住宅 一般公開見学予約
お申込みはこちら
・ご希望の来館日の前日午前10時までにご予約ください。期日を過ぎた場合は、ご予約をお受けできかねますのでご了承ください。
・予約なしでご来館いただく場合はご対応いたしかねますので、必ず事前にご予約をお願いいたします。
・お申込完了後のキャンセル、日程変更はご遠慮ください。やむを得ない場合は、ご予約日の1日前午前10時までに下記の予約専用アドレスへご連絡をお願いいたします。
E-mail:komaikeyoyaku@gmail.com
・このほか、ご予約についてご不明な点がある場合は、【問合せ】までご連絡ください。
【問合せ】
(公財)日本ナショナルトラスト(平日10:30~17:00のみ)
TEL:03-6380-8511 E-mail:komaikeyoyaku@gmail.com
京都府京都市
左京区北白川伊織町64
【アクセス】
①鉄道
叡山電鉄「茶山・京都芸術大学」駅下車 徒歩約7分
②市バス
・3号系統
四条河原町・松尾橋行き「伊織町」下車 徒歩約2分
北白川仕伏町行き「北白川小倉町」下車 徒歩約4分
・5号系統
国際会館駅・岩倉行き、三条京阪 四条河原町 京都駅行き
「上終町・瓜生山学園京都芸術大学前」下車 徒歩約4分
・204号系統
金閣寺・円町行き「伊織町」下車 徒歩約2分
烏丸丸太町・円町行き「伊織町」下車 徒歩約2分
*駐車場はございませんので、公共交通機関をご利用ください。
駒井家住宅では、日曜日の朝に月二回程度チャリティーガーデンヨガを実施しています。
1時間半のレッスンは、ほぐし系から少し運動量のあるものまで、その日のメニューによって様々です。サポートしながら進めていきますので、どのレッスンも初心者の方大歓迎です!希望者はヨガ後に館内見学可能です。※雨の日は室内で実施。
【参加費】
3,000円(現金)
※参加費の一部は駒井家住宅の「ロールスクリーン募金」に充てられます。
【持ち物】
お水、タオル、ヨガマット(無料貸出用マットあり)
〜お得情報〜
5回分の回数券(12,500円)の利用で、1回あたり500円お得です!
実施日は駒井家住宅のSNSにてお知らせしています。
Facebook:https://www.facebook.com/komaihouse1927/
Instagram:@komaihouse1927
Twitter:@komaihouse
2002年、「大切に住み継いできたこの建物と景観、ならびに駒井卓・静江の実績を未来に伝え残したい」というお気持ちから、駒井家のご家族が土地および建物を公益財団法人日本ナショナルトラスト(JNT)に寄贈されました。修復後、2004年から一般公開をしていますが、公開等の運営は駒井家住宅をこよなく愛するボランティアに支えられています。ボランティア活動は、駒井家住宅らしく自由な雰囲気の中で行っています。無理なく活動出来る時に来ていただき、それぞれの個性や興味が活かせることを中心に、見学者のご案内や受付、清掃などをお願いしています。さらに「駒井家講座」といった学びの場もあれば、お庭での柿やブドウの収穫、ドクダミ茶づくりなどのちょっとした楽しみもあります。ボランティアスタッフの年齢や興味の範囲もさまざまですが、皆さんそれぞれ楽しみを持ちながら活動されています。JNTでは、ボランティアにご参加いただける方を募集しています。駒井家住宅各SNSのDMまでお気軽にお問い合わせください。
公益財団法人日本ナショナルトラスト(JNT)は日本のすぐれた文化財や自然の風景地などを保全し、利活用しながら次の世代につなげていくことを目的に、英国の環境保護団体である「ザ・ナショナルトラスト(The National Trust)」をモデルに「財団法人観光資源保護財団」として1968年12月25日に設立されました。
1992年9月25日には名称を「財団法人日本ナショナルトラスト」とし、その後公益法人改革により内閣総理大臣から認定を受け、2012年4月1日に「公益財団法人日本ナショナルトラスト」となりました。
◆私たちの取り組み
JNTは、地域の大切な資源である文化・自然遺産を「守る」「伝える」「つなぐ」という活動を通じて、皆さまの生活の文化的向上と地域振興に貢献しています。その活動は、会員・ボランティアをはじめとした皆さまのご支援により行われています。またJNTへの寄付は、税制上の優遇が受けられる場合があります。
◆私たちの目指すもの
広く国民の皆さまに対しナショナル・トラスト活動への理解と参加を呼びかけ、社会全体で支援していただける組織となるよう積極的に活動を展開いたします。
また、すぐれた文化財や自然の風景地などの地域の資源に光を当て活かすことで、地域のくらしやコミュニティを豊かにし、自立的な保全が促されるよう支援する取り組みを進めるなど地域活性化に寄与いたします。
これまでに全国各地で300件以上の地域遺産の調査を実施し、その価値を明らかにするとともに未来につなげるための提言などを行ってきました。その成果は、JNTの事業に役立てられ、地域のまちづくりにも影響を与えています。
おもな調査対象
貴重な地域遺産を守るために次世代に継承すべき保護対象の認定を行っています。そのうちJNTの支援が必要なものを保護資産として取得・管理し公開や活用を進めています。
◆地域遺産支援プログラム
地域遺産支援プログラムは、文化財指定や有形無形を問わず、地域にとって大切で次世代に伝えていくべき「地域遺産」に新たな光を当て、活かすことで、人々の暮らしや地域コミュニティが豊かになることを狙いとしています。
地域遺産の保存をタスクとするのではなく、地域を取り巻く人々が様々なかたちで地域遺産に携わることで営みが生まれ、地域遺産が必要とされ結果として残っていく―。
このような循環が生まれる環境や仕組みを地域とともにつくることを目指しています。
名称:公益財団法人日本ナショナルトラスト(略称JNT)
場所:〒102-0083
東京都千代田区麹町4-5 海事センタービル4F
オフィシャルサイトURL:http://www.national-trust.or.jp//
JNT会員募集中です
JNTの活動は、皆さまからお寄せいただいた会費や寄付金により行われています。
会員の皆さまには、会報のお届け(年6回)、イベントの優先参加および参加費の割引、会員優待施設のご利用などの特典があります。
会員活動として、民家や町並み、近代建築が好きなJNT会員が集う「民家・町並みサークル」もありますので、お気軽にご参加ください。