建築学生が「将来進みたい職種」 & 「イメージできない職種」ランキング2019春
建築学生が「将来ほしい資格」ランキング
大学生も2年生を過ぎると、そろそろリアルに自分の将来を考えなければいけなくなる時期に入ります。
「こんな仕事をしてみたいな」とそれぞれに思いはあることだと思いますが、具体的にイメージしようとするとよくわからなかったり、本当に自分のイメージ通りなのかわからない、知っているようで実はよくわかっていない職種もあるのではないでしょうか。
そこで今回は「将来進みたい職種」そして、「イメージできない職種」を建築学生のみなさんに聞いてみました!
それではランキングの発表です!
■建築学生が将来進みたい職種ランキング(回答数330件)
順位 | 職種 | 回答数 |
1位 | 設計事務所(建築・構造) | 72 |
2位 | 住宅メーカー | 52 |
3位 | 総合建設業(ゼネコン、サブコン) | 47 |
4位 | 研究・教育機関 | 44 |
5位 | インテリア | 32 |
6位 | 工務店 | 22 |
7位 | 建材・設備メーカー | 20 |
8位 | その他 | 18 |
9位 | 不動産業(デベロッパーを含む) | 14 |
10位 | 官公庁・公団公社 | 9 |
普段から設計課題などで、建築を「作る」「設計する」事が身近だということもありますが、やはり実務として「設計してみたい」という思いがあるからか、作る側をイメージした職種として住宅や店舗などの設計ができる職種が上位にランクインしたようです。
それではここからは、ランクインした資格の特徴や違いを少し解説していきましょう。
■「設計事務所」にも種類がある!?
さて、進みたい職種ランキング、ダントツの1位だった「設計事務所」についてですが、実はご存知の通り「設計事務所」とひと言で言っても、意匠・構造・設備、と専門分野によって大きく3つに分類されます。
おそらく、建築学生のみなさんが「設計事務所」と聞いて一番最初にイメージするのは、デザインに特化した意匠設計事務所、いわゆる建築家の設計事務所が多いのではないでしょうか。
素敵な空間を設計する建築家を日頃からよく研究している建築学生に、この職種が人気なのは頷ける結果です。
しかし、意匠だけが設計事務所の仕事ではありません。構造設計に特化した構造設計事務所、設備に特化した設備設計事務所が、それぞれに専門の知識と技術を出し合うことで最終的に素晴らしい建築が出来上がる、ということを忘れてはいけません。
いずれにしても、良い建築をつくるためにはどの分野の設計専門家も欠かせない存在です。
これから学ぶ様々な科目を通じて、自分のイメージする設計に近いものは何かということもじっくり考えてみたいですね。
■「設計事務所」「住宅メーカー」「工務店」何が違うの??
さて、続いて2位にランクインした「設計事務所」と「住宅メーカー」。そして、6位にランクインした「工務店」。この3つの違い、きちんと説明できる建築学生は意外に少ないのではないでしょうか。
個々の企業によっても得意とするものが違うので一概には言えないのですが、この3つの職種は、それぞれ重きをおく所が違います。建築業界を「設計」「施工」「販売」と分類したとすると、「設計事務所は設計」「工務店は施工」「住宅メーカーは販売」に重きを置いていることが多いです。
「え?でも住宅メーカーにも工務店にも設計職ってあるよね?」と思われたかもしれませんが、同じ「設計職」でも、設計事務所・工務店・住宅メーカーでは仕事の内容も結構違っていたりします。設計事務所はオーダーメイドで建物を設計するイメージ。お客様個々の暮らし方や希望にあった建物を提案・設計します。作る工程(施工)は工務店と契約し、設計作業に対して発生する「設計料」で成り立っています。
工務店は、すでに設計された建物を作ることがメインです。大工さんや内装屋さんなど職人の手配や、建物を作るノウハウを持っています。最近は社内で設計する工務店も増えてきました。設計に力を入れている工務店では、設計事務所に近い仕事ができるところもあります。
住宅メーカーは、本部で様々な住宅の企画商品が提案されていて、その企画商品を販売しています。購入したお客様個々の土地や希望に合わせた間取りは営業や設計の両者で調整していき、施工も社内や関連会社で行います。ある程度決められた企画の中で、お客様の要望に合った形にカスタマイズしていくようなイメージです。これも個々の企業によって違いはありますが、お客様の希望を聞いたり間取りを考えるのは設計職ではなく営業職という場合もあります。
同じ「設計」でも働く場所で違いがあることを知っておくことが大事です。
各職種の特徴を掴んで、自分の希望に合った道は決めていきたいですね。
それでは、ここからは「イメージできない職種」ランキングもふまえてみていきましょう!
■建築学生がイメージできない職種ランキング(回答数230件)
順位 | 職種 | 回答数 |
1位 | 官公庁・公団公社 | 67 |
2位 | 研究・教育機関 | 44 |
3位 | 不動産業(デベロッパーを含む) | 32 |
4位 | 建材・設備メーカー | 22 |
5位 | 総合建設業(ゼネコン、サブコン) | 21 |
6位 | 住宅メーカー | 13 |
7位 | インテリア | 12 |
8位 | 工務店・その他 | 7 |
9位 | 設計事務所(建築・構造) | 5 |
■イメージしづらい職種 第1位。「官公庁・公団公社」
(画像提供:デザインファーム建築設計スタジオ)
建築学生がイメージしづらい職種 第1位は「官公庁・公団公社」でした。
いわゆる公務員ということになりますが、建築関係に絞ってみると、例えば街全体で開発するプロジェクト、図書館や公民館などの公共施設の計画、など都市計画関連の対応や予算計画などに携わることができます。
公共施設の設計を有名建築家が手がけることも多いですよね。その計画の担当者になれば、設計事務所とのやりとりを任されることもあるでしょう。
街を活性化するための計画に携わるという点で、こういった職業も将来の選択肢として考えてみるのもありかもしれません。
■「不動産業」って賃貸契約するだけじゃないの?
将来進みたい職業ランキング 第8位、イメージできない職業3位、と建築学生からの人気はイマイチ・・・だった「不動産業」。
でも、不動産業も建築学生の能力が活かせる職業なんです。
大学に入学して一人暮らしを始めた方は、「不動産業」と聞いて真っ先に、お部屋探しでお世話になった不動産屋さんを思い浮かべたかもしれませんね。もちろんそれも不動産業の一つなのですが、例えば駅前のショッピングモールやマンション開発、リーゾート開発
などの大規模な土地開発も不動産業の一種です。
建築学生なら一度は聞いたことがあると思いますが、そういった大規模な開発を主導する企業を「デベロッパー」といいます。先ほど解説した「官公庁・公団公社」と近い部分がありますが、官公庁が計画の対応や指導をする立場なのに対して、実際に企画や設計、建
設に関わるのがデベロッパーです。
個人の設計事務所で街単位の大規模な計画に参加するのはなかなか難しいですが、デベロッパーは大規模開発を手がけるチャンスに恵まれています。
街並みを作りたい、土地活用の戦略を考えてみたいという思いがあるのなら、不動産の分野でも力を発揮できるかもしれません。
今回建築学生のみなさんに聞いた「将来進みたい職種」と「イメージできない職種」は相反する結果となりました。イメージできなければ「なりたい!」と目標にすることもできないですよね。
ただ、設計事務所でも住宅メーカーでも官公庁でも、個々の企業や団体によって具体的に携わる範囲や仕事内容は違います。なんとなくの職種のイメージだけで将来の選択肢を狭めるのはとてももったいないこと。
まずは一番に「自分は何がしたいのか」を考えて、それが実現できる場所を、職種や職業の枠を超えて探すことが、夢を実現させる第一歩なのではないでしょうか。
将来イメージした自分に近づけるよう、どの職種もじっくりと研究したいですね。
TextbyIzumiTanaka