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里山ユニットで都市緑化を促進する「5×緑」

里山と都市の環で環境保全を

「里山と連携して在来の植物で都市の緑を増やし、都市に季節を取り戻したい」
5×緑(ゴバイミドリ)の代表・宮田生美さんは、7月29日に東京農業大学で開催された「第33回花卉懇談会セミナー 植物を活用した環境対策を探る」で、在来種による緑の魅力と可能性について思いを述べました。

金網で作ったカゴに保水性の高い軽量土壌を詰めて、植生基盤のユニットをつくるシステムで都市緑化事業を展開している「5×緑」は、そのユニットを連続させることで住宅や店舗のファサード・エントランスなどの狭い場所から大規模ビルの屋上まで同一システムによる緑化を可能としました。側面にもテイカカズラなどのツル性植物を植えることができるので、四角いキューブであれば同じ面積でも緑の量は5倍になるというのが社名の由来です。同社の「里山ユニット」はその代表的なシステム。定番サイズとして20、25、30cmのサイズのキューブが用意され、木本類4種、草本類5種が事前に養生された状態で運ばれてきます。現場ではそのユニットを設置するだけです。また、設置スペースに合わせて、サイズや形状を変えて設計することもできます。

植栽は里山と連携しながら在来種を中心にすることで「里山と都市の環」に取り組んでいます。講演で宮田さんは「キキョウが絶滅危惧種になっている」と里山荒廃の問題について述べ、草花の芽を供給してもらうなど、里山の人たちと協力しながら行っている再生活動についても講演しました。都市で生活をする人びとが緑を楽しむことが、里山の植生を守ることにつながるような環をつくることで、日本の在来種保護と都市の緑化を増やす活動に取り組んでいます。

アクロス福岡のシステムを継承

このシステムは、日本最大の緑化建築であるアクロス福岡(福岡県福岡市中央区天神)の植栽設計を行った造園家の田瀬理夫さんが開発したものです。宮田さんは「もっと多くの人がこうした植物たちに触れられるようになればいいのに」との思いから最初はプライベートプロジェクトとしてスタート。その後実績を重ねて、2013年に同社を設立しました。

講演では最近の事例紹介として東京都池袋の豊島区新庁舎など、大手設計事務所による大規模ビルの仕事を紹介する一方で、カフェの手前に数個のユニットを置いて緑化する事例についても楽しそうに語りました。

このセミナーでは宮田さんの他、積水ハウスの榎本恵一さんが「住まいと街を彩る花きの設計手法」、村岡オーガニックの村岡佑基さんが「地方から発信する植物提案」についてそれぞれ講演しました。花卉懇談会(柴田忠裕会長)は、花や植物の様々な魅力、効用、そして生活に合わせた楽しみ方について、セミナーとフォーラムをそれぞれ年1回開催しています。

5×緑
https://www.5baimidori.com/index.html

花卉懇談会
https://kakikon2015.jimdo.com/

ニュースのヒト・コト・モノ

◇里地里山保全
日本に生息する生物やその生育環境が深刻な危機に直面していることから、各地域における保全活動を促進する目的で「地域における多様な主体の連携による生物の多様性の保全のための活動の促進等に関する法律」(里地里山法)が2011年に施行された。里地里山は日本の国土の4割に及ぶとされており、自治体と地域住民が協力して一体となった活動の広がりが期待されている。

◇アーバン・シード・バンク・プロジェクト
荒廃した里山にはたくさんの在来種の種(埋土種子)が眠っていることから、里山を植物の種(シード)を保管してくれている銀行(バンク)として捉え、その種から育てた苗を都市の緑化に使い、里山を人と資金で支援する継続的な里山再生を目指す社会活動。5×緑の「里山ユニット」は主要商品の一つ。東京では里山ユニットを街角に設置するためのファンドレイジング「里山@東京」が行われている。

URBAN SEED BANK
http://urbanseedbank.com/

里山@東京
http://satoyama-tokyo.jp/

◇アクロス福岡
旧福岡県庁跡地に建つ複合施設。基本計画はエミリオ・アンバース、基本設計・実施設計は日本設計+竹中工務店。南の天神中央公園に面した段状の「ステップガーデン」の植栽設計はプランタゴの田瀬理夫氏が担当した。1995年竣工。1996年にBCS賞(建築業協会賞)、 2010年に都市緑化基金主催の「生物多様性保全につながる企業の緑100選」に選出された。
アクロス福岡のHPによると、緑化面積は5400平方m。建設当初の構成樹種は全体で76種類、3万7000本を植栽。その後、補植したり野鳥などによって運ばれた樹種が増え、現在では120種類、5万本程度になっているという。

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