• 旅の追憶
  • 建築の良さは実際に見て触れて、内部に入って光や空気感を感じてこそわかるもの。 このコーナーでは、建築家の方々が影響や刺激を受けた建築を、旅の体験談を織り交ぜながら紹介します。(JIA関東甲信越×LUCHTAコラボ企画)

[連載]「旅の追憶」建築家がすすめる見に行ってほしい建築 01|中澤克秀

「旅の追憶」
Webで簡単に情報を集められる時代、スマホやタブレットを開けば世界中の建物を目にすることができます。しかし、建築の良さは実際に見て触れて、内部に入って光や空気感を感じてこそわかるもの。このコーナーでは、建築家の方々が影響や刺激を受けた建築を、旅の体験談を織り交ぜながら紹介します。今はコロナ禍でなかなか旅行ができませんが、行ける時が必ずやってきます。ぜひ次の旅の参考にしてください。

建築家を目指すきっかけになった旅

建築学生が選ぶ「好きな建築物」2020をLUCHTA(ルフタ)でアンケートした結果、1位に「サグラダ・ファミリア(Sagrada Família)」が選ばれました。世界で最も有名と思われるアントニオ・ガウディ設計のスペイン・バルセロナに建設中の建物です。一位になるのも当然の結果とも思われます。

1882年着工以来、実に約140年超かかって最後の段階であり2026年に完成予定という。完成されれば今以上に世界中から観光客が押し寄せるでしょう。かく言う私も1985年20歳の大学3年生の時に初めてサグラダ・ファミリアを見ました。まだ「生誕の門」しかなく、今知る全体像が実際に建設されるとは夢にも思いませんでした。

この時が私の初めての海外旅行で、建築学生対象にヨーロッパを3週間廻る建築漬けのツアーでした。他にもアテネのパルテノン神殿、ローマのパンテオン、フィレンツェやヴェネチアやパリの街並み、コルビュジエのロンシャンの礼拝堂等、人生の中でカルチャーショックを受けた最初で最大の出来事でした。

20歳の夢のような旅行から帰り、ふと振り返ってみると建築家になりたいと強く思うようになりました。元々設計がやりたい、自邸を建てたいとは思っていましたが、それ以上に建築家の存在と建物のメッセージ力に感動して、自分の将来の夢として明確になりました。

大学の卒論を「アール・ヌーヴォの建築デザインに関する研究」と題して、卒業年にヨーロッパとアメリカを横断する旅(約2か月半)をしました。旅の方が目的で卒論テーマを設定しました(笑)。同時代のカタルーニャ地方のモデルニスモ運動も研究対象で、最大の目的が再びガウディ建築に触れる事でした。バルセロナには10日ほど滞在し、見られるすべてのガウディ建築を訪れました。当時カサ・バトリョは私邸で入れないのだけど、片言のスペイン語をメモして番人していたおばさんにjapanから来たと言ったら、なんと中に入れてくれました。

その後も社会人になってから、姉がスペイン留学中に両親を連れて行き、結婚してからも妻に自分のルーツを知って欲しくてバルセロナを訪れました。サグラダ・ファミリア、グエル公園は定番でもちろん行きますが、もう一つ必ず見に行くガウディ建築があります。それがコロニア・グエル教会(Colònia Güell)です。

(中央部分は全く手つかず状態だった 1987年撮影)

独立後、再訪したグエル公園にて(2002年撮影)

コロニア・グエル教会
Colònia Güell

階段部分は老朽化の為か、ふさがれていた(2002年撮影)

コロニア・グエル教会がなぜおすすめかというと、ガウディ建築の真髄がこの小さな建物(未完成)にすべて詰まっています。ガウディ建築は有機的な装飾と姿に目を奪われますが、自然の原理や重力といった構造を逆吊り模型と言われるもので実験し、構造的裏付けのあるナナメ石柱やアーチ、サグラダ・ファミリアの元にもなる考えなどが、地下礼拝堂には詰まっています。構造と自然との調和がみてとれ、またグエル公園でおなじみの破砕タイルやガウディ設計の椅子など見どころ満載です。そして何より、サグラダ・ファミリアは後世に託された現代建築でありますが、ここにはガウディの生きていた当時のままの姿として存在していることです。

この教会は私がおすすめする実際に見に行ってほしい建築物の筆頭です。バルセロナ郊外にあり、電車で行けます。また今はインフォメーションセンターがあって、入場券を買って入れます。以前は、単なる地元の教会で閉まっているので、外でスケッチを何時間もして待っていると、どこからか信者の人がやってきて開けるので、お布施(チップ)を渡して入れてもらったりしました。現在は整備されて、見学しやすくなっているようですが、実際に訪れる時はネットなどで最新情報を見てください。

所在地
スペイン、バルセロナ市郊外

設計者
アントニオ・ガウディ

竣工年
1908年~1917年建設中断(未完成)

当時は使われなかった石柱が敷地内にごろごろしていた(1987年撮影)

グエル教会の前で待っている時に書いた スケッチ(1987年)

グエル邸
Palau Guell

真っ青な空に映える屋上の建築物(2002年撮影)

ガウディのパトロンであった実業家エウセビ・グエル。その邸宅として建てられ、現在は見学ができるようになっています。ファサードは重厚な趣でガウディの曲面はないのですが、アルハンブラ宮殿を彷彿させる吹き抜けホールの天井、屋上の煙突群には、初期の設計でも既にガウディらしさ満載。銅板加工職人の父から受け継いだ鉄の装飾はカサ・ミラへと続きます。道を隔てた反対側にその名も「ガウディ ホテル」があり、バルコニーから屋上煙突群を眺めながらの朝食は最高です。

所在地
スペイン、バルセロナ市内

設計者
アントニオ・ガウディ

竣工年
1890年

カサ・ミラ
Casa Milà 

下から見上げるとド迫力のあるうねりの造形(2002年撮影)

賃貸住宅の世界遺産はこれだけみたいですが、今も現役です。1980年代に見たときは外壁の石が黒くて威厳を放っていました。その後再び訪れた時はきれいな白い状態でした。排気ガスなどで黒くなっていたようで、象徴的な鉄装飾のバルコニーの手すりが目立ちます。私的には黒いドロドロした威厳のあったカサ・ミラの方が好きですね。外部の波打った表現が特徴的ですが、内部は合理的に、連続したアーチなどだいぶ印象が違います。構造を重視した内部と自由な屋上の煙突群の対比もぜひ見てもらいたいと思います。

所在地
スペイン、バルセロナ市内

設計者
アントニオ・ガウディ

竣工年
1912年

文・写真・スケッチ:中澤克秀

この連載は、JIA関東甲信越支部広報委員会とLUCHTAの共同企画です。

著者紹介

中澤克秀 中澤建築設計事務所
JIA正会員
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