(大会レポート)デザコン2019 in TOKYO 第16回全国高等専門学校デザインコンペティション 東京大会[後編]
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オリンピック・パラリンピックでスポーツを競う
東京でデザインを競う
デザコン2019 in TOKYO
第16回全国高等専門学校デザインコンペティション 東京大会
Design Competition for KOSEN Students
新『五輪書』地之巻
空間デザイン部門
建築設計のコンペティションと同様に、建築設計案の優劣を競う部門。
外国人観光客の増加、少子高齢化に伴う人手不足、日本に居住する外国人の増加を背景として、2019年の課題は、日本人と外国人の交流や相互理解を円滑に行なえる外国人との共生空間の創出だ。敷地と建物用途は自由だが、敷地周辺の日常生活や行事・イベント、まちづくり、組織などに関する現地調査をもとに提案することが求められた。
予選通過10作品は、A1判サイズ(横向き)ポスター最大2枚(必須)、模型などを、規定寸法の展示スペースに自由に展示。展示デザイン自体も審査の対象になる。
パソコンとスクリーンを使った提案説明と質疑応答(プレゼンテーション)、展示会場での巡回質疑応答(ポスターセッション)を経て、公開討議により、すぐれた設計案5作品が入賞となった。審査員特別賞の選定では3案が拮抗し、最後の審査員特別賞枠を競った。
新『五輪書』水之巻
構造デザイン部門
規定の材料を使って、規定寸法の構造物を作り、そのデザイン性、軽量性、耐久性を競う部門。
2019年の課題は、昨年までと素材が変わって紙製の橋。まず仕様確認で、規定通りの仕様で制作されているかを確認。不備があれば修正して再度、検査を受ける。不備があるまま耐荷性能試験に望む場合は減点される。
審査員審査では、審査員がポスターと制作した橋を展示したブースを巡回して参加学生と質疑応答。「プレゼンテーション」「作品の構造性」「作品の出来栄え(配色含む)」の3項目で評価する。
耐荷性能試験では、おもりを段階ごとに増やして橋に集中荷重をかけていき、最後まで、橋が変形せずに耐えられれば満点。
◎初期荷重(7kg)→集中荷重(10kg→10kg→10kg→5kg→5kg→5kg→5kg)=合計50kg
各審査過程での評価を合算した総合得点をもとに、入賞6作品が決まる。頑丈で、軽量で、美しい作品が評価された。
新『五輪書』火之巻
創造デザイン部門
地域資源を活かし、高専が何らかの形で関わるプロセス・デザインの提案の優劣を競う部門。プロセス・デザイン=地域資源をもとに発想し、適切な段階で技術や知識、人材を加えることを経て、目標とする地域像を実現するためのプロセスの提案、を意味する。
提案内容は、創造性のある「こと(サービス)」でも「もの(装置や製品)」でもよい。いずれも、それがどのような仕掛けで地域振興に関与していくかというプロセス・デザインの提案が必要。
2019年の課題は、「地元愛」に重点を置いた、地元を良くするためのアイディアの提案。自治体や企業との連携や協働を視野に入れ、地元の魅力や資源に高専の強みである実践的技術を加えた、地元住民が地元愛と誇りを持って、安心して暮らせる仕組み(アイディアとプロセス)が求められた。
今年は初の試みとして、初日に専門ファシリテータによるワークショップが取り入れられた。初日のグループワーク(午前:混成メンバーのグループで「持続可能な開発」をテーマに、午後:予選通過作品メンバーのグループ)の成果をもとに各提案(ポスター)をブラッシュアップ。当初案からの進化度を踏まえ、翌日の展示会場での巡回質疑応答(ポスターセッション)を経て、地域性、自立性、創造性、影響力、実現可能性、プレゼンテーション力にすぐれた提案が入賞6作品となった。
新『五輪書』風之巻
AMデザイン部門
AMデザインのAMとは、Additive Manufacturing=付加製造の略。複雑な構造や一品物を製造できるAM技術=3Dプリンタによるものづくりのアイディアの新規性と事業性を評価する部門だ。主要部品にAM技術を使った製作物を多面的に評価する。
2019年の課題は、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会を背景とした「社会的弱者に向けたスポーツ支援アイテム開発」。競技スポーツだけでなく、生涯スポーツも含めた各種スポーツを支援する新たなアイテムを、3Dプリンタによる造形技術を活用して開発することが求められた。
A1判サイズ(縦向き)ポスターと3Dプリンタによる製作物(必須)、補足の物品などを展示する。パソコンとスクリーンを使った提案説明と質疑応答(プレゼンテーション)、展示会場での巡回質疑応答(ポスターセッション)を通して、参加学生の相互投票結果を参考に、作品の新規性・独創性、実用性、事業性、活用性、プレゼンテーション力が評価された。今年は、優秀賞1作品は該当がなく、4作品が受賞。
新『五輪書』空之巻
プレデザコン部門
デザコン参加への準備段階として用意された、低学年(本科3年まで。高校生の世代)を対象とする部門。他の4部門と関連したフィールドに分かれ、今年はフィールドごとに各課題に応じて評価された。
2019年の課題は、
①空間デザイン・フィールド:現存、または過去に実在した構造物や風景の透視図。一般的に人の目では見られず、写真でも撮れない構図であること。
②創造デザイン・フィールド:2020年名取大会のエコバッグのデザイン。
③AMデザイン・フィールド:3Dプリンタで造形した部品のみを使った100×100×100mm以内のシェルター。自由落下によって受ける衝撃力の小さいほど上位になる。
①②は、各課題に応じた提案をまとめたA3判サイズのポスターのみで評価された。展示された応募ポスターを見て、関連他部門の審査員(今年は空間デザイン部門のみ)、協賛企業、一般来場者が投票し、合計得点により入賞作品が決まった。
③は、測定器(ロードセル)による測定値の小さい順に入賞作品が決まる。今年は残念ながら、1作品以外は失格。失格の中で惜しかった作品が奨励の意をこめて優秀賞となった。
取材・文:高遠 遙
Photos except as noted by the author.
結果報告へ続く↓
⇒ 【結果報告】新『五輪書』 デザコン2019inTOKYO 第16回全国高等専門学校デザインコンペティション
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編:一般社団法人全国高等専門学校連合会
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東京で開催された第16回「全国高専デザコン」、その全容を伝える公式記録集。空間デザイン/構造デザイン/創造デザイン/AM(Additive Manufacturing)デザイン/プレデザコンの全5部門を収録。各競技の審査過程を明らかにし、作品ごとに講評も掲載。応募作品全293点を網羅した完全版!
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13回目を数える「全国高専デザコン」、そのすべてを伝える公式記録集。 2016年12月に行われた高知大会でのAM(Additive Manufacturing)デザイン、構造デザイン、空間デザイン、創造デザイン、プレデザコンの5部門、全作品を網羅、延べ3日間にわたる競技の全容を伝える。
デザコン2015 in 紀の国わかやま+AMデザイン部門夏大会
高専スピリット、百花繚乱。 未来の技術は、彼らが拓く。 12回目を数える「全国高専デザコン」、そのすべてを伝える公式記録集。 2015年11月に行われた和歌山大会での空間デザイン・構造デザイン・創造デザイン・AM(Additive Manufacturing)デザインの5部門に加え、8月に仙台で開催の別競技(AMデザイン部門夏大会)も併せて収録。 全280作品を網羅、延べ3日間にわたる競技の全容を伝える。
デザコン2013 in 米子
ロボコンだけじゃない、高専のアタマとワザ! 第10回目を数える「全国高専デザコン」、初の公式記録集。全298作品を収録、空間・構造・環境・創造・3Dの5部門にわたる競技の全容を伝える。